脳卒中・循環器病対策基本法案の国会提出について
東京大学大学院医学系研究科循環器内科学 教授 小室一成 氏

最初に、この医療政策提言の策定、今回の記者発表につきましては、日本循環器学会が「これからの心臓病医療を考える会」に協力する体制で臨んでいることをご報告致します。

さて、脳卒中・循環器病対策基本法案の国会提出についてですが、歴史的な背景からご説明します。2009年から脳卒中関連14 団体共同で「脳卒中対策基本法」の立法化が図られ、2014年に参議院で議員立法として発議されましたが、その年の衆議院解散により残念ながら廃案となりました。

そこで、さらに心臓病対策も加えた新法案「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法案(脳卒中・循環器病対策基本法)」が2017年に策定され、同年4月、法案成立を求める集会が参議院議員会館で開催され、130名を超える国会議員、代理人が参加し、成立に向けて賛同をいただいた。現在、今国会での成立に向け、提出の時期を見ているところです。

脳卒中を含めた循環器病は、がんと並ぶ2大疾患であり、その理由は大きく3つあります。まず、死亡者数の多さです。高齢者においてはがんとほぼ同じで、後期高齢者に限ればがんを上回ります。

2つ目は、我が国の平均寿命は世界2位ですが、健康寿命と平均寿命に12年の乖離があります。その最大の原因は、脳卒中を含めた循環器病で、がんはこの乖離の原因にはなっていません。そして、3つ目は医療費で、日本の医療費は40兆円を超えていますが、最も費やされているのが循環器病で、がんの1.5倍かかっています。

加えて、がんと最も違うことは予防です。がんの予防はなかなか難しいですが、循環器病は予防ができます。特に心不全は、ステージAにならないため、高血圧や糖尿病にならないためのマイナス1次予防ができます。たとえ高血圧や糖尿病になっても、心筋梗塞にならないための0次予防ができ、仮に心筋梗塞になっても、心不全にならないための1次予防ができます。心不全を発症しても多くの人が元気になります。そして、二度と心不全にならないための2次予防ができます。つまり、心不全には4回予防ができるという点において、がんとは全く異なります。

何よりも重要なのは、心不全は予防ができることを一般に広く知ってもらうことです。そのためには国の力が必要です。医療体制、疾患登録、予防啓発、さらに研究の活性化と、国の力を借りて大きな運動にしていきたいと考えています。

第2回終わり(第3回に続く)