糖尿病と心不全の関係

信州大学には先端心臓血管病センター(ACVC)があり、心疾患に関する先端的な治療法開発に取り組んでいると伺いました。

桑原 平成16年に、池田宇一先生(現・信州大学医学部名誉教授)を教授として、循環器内科学教室が第5内科として独立しました。その際に池田教授は、次の2つの目標を掲げられました。それは、信州大学において世界に発信できるレベルの循環器診療研究を行うことと、信州大学を中心とした長野県全体の循環器診療のレベルアップを図ることです。これを受けて平成17年に、循環器内科、心臓血管外科、小児循環器の各部門が協力し、心臓血管疾患の国際的な水準をリードする診療・教育・研究を提供する機関として先端心臓血管病センター(ACVC)が設立されました。超高齢社会を迎え、今後、心臓血管疾患の増加が見込まれます。こうした状況に対応するためACVCは、長野県の循環器診療における中核拠点として、地域に密着した最先端診療を実践しています。

心疾患の中でも、とりわけ問題なのが心不全ですね。

桑原 心不全は様々な心疾患を背景に発症する疾患であり、まさに心疾患の終末像といえます。その恐ろしさを広く一般に周知するため、日本循環器学会と日本心不全学会が「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」という定義を2017年10月に発表しました。日本では循環器疾患の死亡数が、がんについで第2位です。中でも心不全になると5年生存率は50%くらいとのデータがあり、つまり心不全を発症すると5年以内におよそ半数の患者が亡くなります。ひとたび発症すると、現在の医療では完治できない心不全の怖さを、多くの人に正しく理解してもらう必要があります。

桑原先生は、糖尿病合併症としての心不全を訴えられています。

桑原 心不全につながる疾患として、糖尿病は大きな問題です。もちろん心不全になる原因としては、他にも様々な疾患があります。例えば虚血性心疾患、高血圧、弁膜症や不整脈などが心不全につながりやすい疾患であることはよく知られています。ただし、虚血性心疾患や心筋梗塞の患者さんの約半分ぐらいが、実は糖尿病も患っています。同じ虚血性心疾患や心筋梗塞でも、欧米では糖尿病患者の割合は約3割前後ですから、糖尿病の割合が多いのは日本独自の傾向と考えられます。日本では糖尿病を患うと、虚血性心疾患や心筋梗塞を経て、やがては心不全に至る危険性が高くなります。

その糖尿病患者が日本では増えているのは、危険な兆候ではないでしょうか。

桑原 厚生労働省の調査によれば、2016年に糖尿病が強く疑われる患者数が推計で1000万人に上りました。同省が調査・推計を始めた1997年から糖尿病患者数は、一貫して増え続けています。その背景として考えられるのは、食生活や生活習慣の変化によりメタボ体質の人が増えていることでしょう。糖尿病予備群は減りつつあるとはいえ、それでも約1000万人と推計されています。糖尿病患者とその予備軍を含めば、日本では約2000万人の方が、将来的に心不全にいたる潜在的なリスクを抱えている計算になります。