ステージBでのCRT適応について

心不全発症を防ぐ意味で、ステージBの患者へのCRT適応についてどのようにお考えでしょうか。

安藤 NYHA心機能分類でⅠ度に相当する人ですね。こうした症状は出ていないものの、心機能が落ちている患者さんを対象とした、CRT適応に関する臨床試験が行われていて、その結果が出ています。これによれば、Ⅰ度の患者さんに対してでもCRTを行えば寿命が伸びると報告されています。NYHAⅠ度の段階でCRTを行った患者さんと行わなかった患者さんについて、その予後を7年ほど追いかけてみると、明らかな違いがみられるようです。大規模なランダム化比較試験の結果ですから信頼性は高いと思います。

自覚症状がなくても心機能が悪化している患者さんに対しては、先制介入としてCRTを行うことで、何も行わなかった場合に発症していたであろう心不全を防ぐ可能性があります。

そうなると心不全に関しても、がんと同じく早期発見が予防のカギになりそうです。

安藤 40歳頃からは年に1回は健康診断を受け、心電図を撮ってもらうと良いでしょう。そこで左脚ブロックが出ていれば、心エコー検査へと進むはずですから早期発見につながります。レントゲンで心臓が大きくなっていれば、そこでチェックできます。ともかく心臓に関して何らかの問題があれば、心エコー検査や冠動脈チェックなどの精密検査を求められます。その段階で見つけることができれば、心不全の発症を防げる可能性は高まります。

その意味ではステージBの段階での対処が、心不全発症を防ぐための重要課題だと思います。そのまま放置しておけば3年から5年で心不全を発症する人を早期発見し、早い段階で手を打つ。10年ほどのスパンで考えれば、明らかに寿命の変わることをアピールする必要があると思います。

そうした対応が「心不全パンデミック」を回避するためにも必要ですね。

安藤 当院でも高齢の心不全患者は、確実に増加しています。そして心不全になった人の多くが、何度かの入退院を繰り返します。幸い、当院は循環器内科に多数の医師がいるので、今のところパンデミックになる恐れはありませんが、将来患者数が急増したときに、果たして対応しきれるのかといえば、決して不安がないわけではありません。

他の地域の状況がどうなっているのかはわかりませんが、今後重要な課題と考えているのが、地域の医療センターです。開業医の先生方、地域のセンター病院、そして救急対応や手術を行う我々のような施設の役割分担を明確にする必要があると考えています。

役割分担が心不全パンデミックを回避するために不可欠となりますね。

安藤 心不全に対して、一つの病院だけで治療を完結するのは無理があります。初期段階での発見から初期治療に関わる開業医の先生方、高度急性期病院として緊急の手術や緊急時の治療に対応する当院のような存在に加え、緊急状態を脱した後の慢性期治療を受け持つ地域のセンターといった総合的な体制を構築する必要があります。

心不全パンデミックがすぐ先に見えている現状としては、まず患者予備軍の人たち、具体的にはステージAやBの人たちへの啓蒙も必須でしょう。食事や運動、休養のとり方など、市民公開講座やセミナーなどで熟知を図り、同時に健康診断による早期発見と初期段階での介入の必要性を理解してもらう。こうした重層的な対策が、現状を放置していれば確実にやってくる心不全パンデミックを防ぐための対応策だと思います。

第2回終わり(連載2回)