CRTを必要とする患者に治療が届いていない

開業医の先生方は、どんな患者さんがCRT適応となるのかが今ひとつ明確になっていないのではないでしょうか。

中井 そこで提案したいのが、レントゲンと心電図、そしてBNP検査の3点セットです。これで異常が見つかった場合は、迷わず専門医に相談する。こうした原則が明確に示されれば、迷うことはなくなるはずで、その後は、専門医がきちんと検査することを手順として定めるのです。

こうした検査手法が普及すれば、心不全治療における重要な課題であるステージBの患者さんを見つける手立てにもなるはずです。ステージB患者の発見を主目的とするなら、心エコー検査だけに絞っても良いでしょう。これなら体への負担がなく、比較的安価に行えます。高血圧の患者さんに心エコー検査を行えば、隠れたステージBを発見できる可能性が高まります。

それこそ、高血圧の方なら1年に1度は心エコー検査を受けてもらえば良いと思います。BNPのように採血するわけではないので、患者さんの心理的ハードルもかなり低いのではないでしょうか。

CRTを受ける患者さんの意識はどうなのでしょう。

中井 日本人は、体の中に何かを入れることに抵抗を感じる人が多いといわれます。だから、私たちも適応だからといって、すぐにCRTを入れましょうなどと働きかけたりはしません。ただレントゲンを撮って見せると、明らかに大きくなった自分の心臓を患者さんも確認することができます。その時点では心不全による症状、例えば息苦しさなどに悩んでいなくとも、少なくとも自分の心臓についての認識は改めてもらえます。 この自覚が大切です。患者さんの頭の片隅に自分の体についての自覚があると、症状が悪化し始めたときに「いよいよ来たな」と、早い段階で病気を認識してもらえます。今はネットで検索すれば、すぐに情報が手に入る時代です。CRTについて、自分で調べる方もたくさんいらっしゃるでしょう。

その結果、改めて相談に来られるケースも出てきています。だから、患者さんに対しても幅広く、少しでも早い段階で情報が伝わるよう仕掛けていく必要があります。

開業医の先生方、一般の患者さんの2方向に向けた情報提供が必要ですね。

中井 私が所属する日本不整脈心電学会、あるいは日本心不全学会などでは、もちろんCRTはよく知られています。ただ、専門外の先生方、例えば日本内科学会の先生方にはリーチできていません。その結果として、開業医の先生方にもなかなか伝わらない。

患者さんについても同様で、そもそも心不全に対する認識そのものが、まだかなり低いのが実状です。だから学会が一般向けの心不全の定義を定めたり、キャンペーンを展開しているのです。団塊の世代が後期高齢者となる2025年までの数年間が勝負だと思います。