心不全の啓発は
全体の底上げが必要

次に、心不全の啓発についてお伺いします。第1回でもお話があったように、一般向けの心不全の定義が発表されるなど、以前とは変わってきたように思いますが、啓発についてはどのようにお考えでしょうか。

小室 患者さんが急激に増えたことなどから、心不全への関心は高まったと感じています。例えば著名人が心不全で亡くなると、新聞社などから心不全について解説してくれという依頼が来るようになり、2年前とは随分状況が変わりました。しかし、心不全の啓発はまだまだ十分とは言えません。どのレベルで啓発が足りないかというと、一般の人から地域のかかりつけ医、循環器専門医まで、全ての底上げが必要です。

まず、一般の人たちに対しては、心不全がいかに重篤な病気であるかを知ってもらい、ただし重篤な病気であるものの本人の努力で予防ができ、心不全にならずに一生を送れると理解してもらうことが第一です。

次に、私たち医療者への啓発に関しては、循環器の非専門医と専門医に分かれます。冒頭で触れたように、普段から患者さんを診ているかかりつけ医の先生方には心不全を疑って必要な検査を行い、いち早く心不全に気づいて、必要時には専門病院に送っていただくこと。そして、退院後はかかりつけ医と看護師・理学療法士などがチームをつくって、個々の心不全患者を診ていただくことが重要です。

循環器専門医への啓発、教育についてはいかがですか。

小室 心不全の治療法は日進月歩で変化しています。とりわけ心臓移植は我が国でも随分進み、その一つ手前の補助人工心臓も非常に有効で、以前であれば若くして心臓が悪くなり手段がなかった人も、補助人工心臓をつけて心臓移植までつなげることが可能になりました。

このように変化してきた中で、循環器専門医は決して諦めないことです。特に若い患者さんに対しては諦めず、最後の心臓移植までもっていかなければなりません。技術の進化に伴い、新しい薬やデバイスも次々に出てきているので、循環器専門医は常に新たな知識を導入し、応用していくことが求められます。

デバイスのお話が出ましたので、CRT(心臓再同期療法)についてお伺いします。CRTは日本ではあまり普及していないと聞きますが、これをどう思われますか。

小室 以前はどんな人がCRTの適応なのかがわからなかったため、多くの心機能低下患者に使われていました。現在では心電図のQRS幅が広い人に有効であることが明らかになったので、有効性が期待される人だけに使用されています。それ以上に有効なのは、ICD(植込み型除細動器)、CRT-D(両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器)です。

心不全の死因のトップは突然死です。もちろん重症心不全で息が苦しくなってそのまま命を落とす人もいますが、それよりも多いのは心不全の治療を受けているうちに突然亡くなる人で、その突然死の多くが不整脈死です。心機能が悪い人は、あらかじめデバイスを埋め込むことで生命予後が伸びることは証明されているので、不整脈死を防ぐためにはICD、またはCRTまたはCRT-Dの埋め込みを積極的に導入すると良いと思います。

地域のかかりつけ医が大学病院等へ患者を紹介する際、CRTが適応するかどうか見極められなかったり、紹介しても適応しなかったことで、次から紹介をためらうという話も聞きます。

小室 どのような人が適応なのかという啓発がうまくいっていないのかもしれません。CRTに関しては、駆出率が35%以下の中等度以上の慢性心不全で、心電図でQRS幅が120以上であれば有効な可能性があります。ただ、日常診療に追われるかかりつけ医の先生方が分厚いガイドラインを読みこなすことができるかと言うと、必ずしも容易ではないでしょうね。もっと活用していただくためには、私たち学会がわかりやすいガイドラインを作らなければならないと考えています。

第2回終わり(第3回に続く)