医療者、患者ともに心不全への理解を深めて欲しい

CRTの意義をもっと広く知ってもらう必要がありそうです。

猪又 小手先的には、心電図でのQRS幅などCRTの適応を広く認知してもらう必要があるのでしょう。ただし、本当の意味でCRTに振り向いてもらうには、心不全に触れる医療者にCRTの情報を流すだけでは不十分です。「線の医療」としての心不全管理そのものを理解し、意識を深めていただくことが何より大切です。理解さえあれば、「かくれ心不全」に対しても様々な手を打とうとするはずです。「必要な患者さんにCRTを」との流れが、自ずと生まれるに違いありません。ところが現状はと言うと、初期の心不全であればとりあえず利尿剤でその場はしのげてしまう。ただし、急場を処理しても、根本となる要因を取り除かなければ、いつかは取り返しのつかないことになってしまう、それが心不全の恐ろしさなのです。

心不全を取り巻く環境に問題があるのでしょうか。

猪又 心不全の専門医が限られている以上、心不全患者さんの多くが専門医ではない先生に診てもらっているのが現状です。他領域を専門する循環器医、さらには、循環器を専門としない一般医の先生方に対し、CRTのような機械と薬という異なる治療ツールを、時間軸の中でどう包括的に組み込むのか、脚本作りの手法を根気よく広げていかねばなりません。特に、薬とは異なり、CRTは体の中に入れてしまうとそう簡単には外せない点が導入のハードルになっています。CRTを植える技術に加え、導入するタイミングを明確に提示できる医療者を増やすことが急務でしょう。

CRT普及のためには組織的な動きが必要ですね。

猪又 米国では心不全専門医がいて、心不全患者の診療を包括的にマネジメントし、適正なフィーも設定されています。そうしたシステムが日本にはほぼないためか、どうしてもCRTだけが心不全管理のなかで浮いてしまう傾向にあると思います。

どうやら構造的な問題があるようです。

猪又 わが国でも、心不全管理に戦略を持つ必要性が理解されるようになってきました。しかし、それを広めるには、医師個々人の技量や努力だけでは限界があります。病診連携においては、ハブ施設と地域の先生方が目的意識を共有できる組織作りが大切です。CRTで言えば、かかりつけ医の先生方に対しこの治療法に振り向くべきポイントを絞り込んでお伝えしなければなりません。

最後になりますが、わが国の心不全診療は今後どのように形を変えていきそうでしょうか。

猪又 心不全パンデミックを控え、昨年あたりから学会や行政を含め、ようやく社会が動き始めた感があります。まずは、心不全で困っている多くの患者さんの存在を認識する。そして、「線としての」心不全病態を理解し、時間軸の中で治療ツールを適正に組み立て、地域医療の中に馴染ませていく。私は、この2018年を『心不全元年』だと思っています。そのためにみんなが一歩ずつ、着実に歩みを進めるための尽力を惜しむつもりはありません。

第2回終わり(連載2回)