心不全ハートチームを機能させるために

心不全治療における議論では、心不全ハートチームも重要なテーマです。中村先生が一つのWGの座長を務めていらっしゃる「これからの心臓病医療を考える会」では、この5月に医療政策提言を発表しましたが、その中でも心不全のハートチームのあり方について述べられています。あらためて中村先生のお考えをお聞かせください。

中村 ハートチームの現状は、理想に向かう途上であると理解しています。元々は欧米で始まった心不全ハートチームですが、そもそものベースがそれぞれ大きく異なるため、形だけをそのまま持ってきても日本で定着させるのは難しいと思います。欧米では心血管疾患不全関連の治療施設がセンター化されていて症例数が多い。ところが日本はセンター化されていないため症例数が少なく、外科と内科で患者さんの取り合いになります。

症例数が多いと、状況が変わるわけですね。

中村 もう一つ、決定的に異なるのが診療報酬の制度です。米国などで見ていると、外科が手術したほうが良い患者でも、平気で内科に任せたりしています。どういうことかというと、ハートチームで引き受けた患者さんに対しては、実際に治療をするしないにかかわらず、同じチームに所属する外科と内科が、フィフティ・フィフティで報酬を受け取ります。極端にいえば、外科は何もしなくとも報酬を半分得られる。であれば、万が一失敗したら、すぐに訴訟されるリスクのある手術を避けるほうが賢明な判断となるでしょう。

日本とは判断基準が根本的に異なりますね。

中村 医師のモチベーションも日本とは大きく異なります。日本の医師たちは、外科医も内科医も一つでも多く症例をこなし、できる限り技術を高めたいと考えています。そして、報酬に関係なく、常にベストを尽くそうと医師たちは頑張っている。患者さんサイドから考えれば、非常に幸せな状態ともいえます。とはいえ、そのために外科医と内科医がお互いに譲らないケースも出てくる。そこにハートチームの難しさがあります。

外科医と内科医を繋ぐチーム機能

中村先生のお話を伺って、うまく機能しているハートチームがある一方で、今ひとつ内科医と外科医が噛み合わないケースもあることがわかります。

中村 現実問題としては、今のところはまだ内科医と外科医の共通言語が確立されていないようです。たとえ話をしたとしても感覚的なレベルに留まっているケースが多いのではないかと考えています。また、実際に患者さんを目の前にしているのかという問題もあります。

恐らく内科医は、自分で患者さんを診ているでしょうが、外科医は写真しか見ていない場合もあるでしょう。患者さんの見た目は、治療戦略を考える上では重要な手がかりとなるため、本来なら外科医も診るべきです。

それは時間の制約を考えると現実的には難しそうです。

中村 その通りです。四六時中、内科医と外科医が一人の患者さんに関わっているわけにもいきません。もちろん、全ての心臓病の患者さんに対し、チーム体制で治療に当たるわけではありませんが、効率的に進めていくのは、それほど簡単なことではなさそうです。

そこで最初の話に戻りますが、やはり「病気を治すのではなく、病人を治す」視点が今こそ必要だと思います。これまではがんにしても、心不全にしても、我々医師は病気ばかりを見てきました。しかし、病人としてどうあるべきかを考えるなら、フレイルの考え方も援用して、これ以上の治療はやらないという判断もあり得ると思います。

医療の進歩に伴い、医師はどうしても病気だけを診がちになっていました。ここでもう一度、原点に戻って、「病気ではなく、病人を診る」。そうした姿勢があらためて求められているように思います。

第2回終わり(連載2回)