介護人材の不足も問題になっています。これについては、いかがでしょうか。

斉藤 介護人材の不足や効率化が課題とされる中、人材の確保・定着対策などのICTを活用した生産性や品質の向上、介護ロボットを活用した介護負荷の軽減に対する取り組みが、今後活発化してきます。昨今、外国人採用も話題になっていますが、まだまだ解決すべき課題なども山積しており、あまり現実的ではありません。医療はテクニカルな部分が多く外国人採用も進むと思いますが、介護は暮らしそのものであり、文化や風土、国民性などによる認識の差異が影響するところが多く、量の確保は難しいのではないかと感じます。

政府が唱える「1億総活躍社会」にもあるように、元気な高齢者や子育てを終えた女性なども多数いるので、企業や国の補助等を組み合わせた多様な就労体制を構築することにより、介護人材不足問題も解決できるのではないかと考えています。

また、老人ホームでの虐待等が大々的に報道されていますが、背景には厳しい経営状況の介護事業者が多くことが挙げられます。介護スタッフの賃金も過重労働の割に産業界全体から見ても非常に低く、それが採用や定着率も低下につながり、慢性的に人手不足の状況です。ストレスを抱えた介護スタッフに、将来の暮らしが描ける処遇改善や人材育成プラン等の人事・福利厚生制度、働きやすい環境整備など魅力的な職場つくりに国や企業を上げて取り組んでいく必要があると感じます。

前述した総務省と組んだプロジェクトも、目的はまさにそこです。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)も含めたICTを活用し、現場の負荷を軽減しながら、健康管理や見守りの情報をきちんと管理していく必要があります。センシングや通信などの要素技術が著しく進化し、個人情報の保護などセキュリティ面の課題やマイナンバー制度との連携等、まだまだやることはありますが、高齢社会を支える重要な生活インフラです。

未来のための“今”を
社会に発信する意義と責任

斉藤さんは、連載2回目に「自分たちは発信し続ける使命がある」と言われました。こうした展示会で発信することの意味について、あらためてお聞かせください。

斉藤 今回訴えたかったのは、現在だけではなく、未来のための“今”何をすべきかということです。2025年、高齢化率は30%を超え、団塊の世代の全てが後期高齢者となります。そして、2060年には総人口は100年前の水準に戻り、高齢化率は40%、4人に1人が後期高齢者、労働力人口は現在の6割という時代が到来します。2020年は「東京オリンピック・パラリンピック」の年で、当社もスポンサーですが、オリンピック後の社会において介護事業の産業化は進展すると考えています。

当社が、今後全国に展開していく介護サービス事業所は、地域包括ケアの拠点となります。また、在宅介護や施設介護を支えるシステムや製品においても、パナソニックとして「こんな未来の介護シーンを考えていく」という姿勢を展示会等でも発信していきます。まだ煮詰まっていないもの、技術的に未完成のものもありますが、介護事業に関わる企業として、社会課題の解決に取り組む姿勢を社内外に発信する責任があると考えています。

先述した松下幸之助の水道哲学を現代版に置き換えてみると、モノが満たされている現代では低廉な大量生産による物資の供給は必要ありません。しかし、安価で良質な福祉・介護サービスが提供される社会が実現できれば、素晴らしいと思いませんか。

これからの介護を考えたとき、少子高齢化や労働人口の減少など、様々な社会背景や社会変化の中で、いかに快適な介護環境を整えていくのか。私たちは介護サービス事業、介護ショップ事業、介護機器・設備事業と幅広く展開していますが、そこでパナソニックとしてやるべきことはなんだろうか。全てを具現化できないにしても、未来のための“今”を考え続け、これからも発信したいと思っています。

第5回終わり(第6回に続く)