医療法人社団慶成会会長の大塚宣夫氏は、自分の親を安心して預けられる施設を目標に1980年に青梅慶友病院を創設。そこで培った高齢者介護・医療の経験をもとに2005年によみうりランド慶友病院を開院した。大塚氏が目指すのは、その人の残された能力を見極め、医療の関わり方を根本的に見直し、生活の質を高めることに注力した“豊かな最晩年”の実現である。両病院はともすればホテルと見紛う居住スペースやギャラリーのような院内、豪華な食事等が注目されるが、社会を変えるという大塚氏の確固たるポリシーのもと、高齢者の医療や看護、介護について常に独自の取り組みを続け、確かな成果を出してきた。

連載3回の2回は、職員に対する思い、給与や待遇、そして医療と介護の一体化などについて、引き続き大塚氏にお話を伺った。

「豊かな生活の場を創造したい」
その価値観を世の中に問う

「高齢者医療の基本は見極めをつけること」という大塚先生のお考えは、最初から医師や看護師に受け入れられたのでしょうか。

大塚 それが受け入れられず、今までに医師や看護師と衝突し、退職してもらったことも数知れずあります。よみうり慶友病院での当初のトラブルの大きな一因もそれでした。医師や看護師といった医療専門職は難しいですね。それぞれ歩んできた道があり、それぞれが自分の中に医療のあるべき姿を持っています。その難しい人たちを集めると、「なんでこの病院は1日1回しか体温を測らないんだ」「医療的なチェックがこの程度でいいのか」「この病院はアルコールを飲ませるのか」といったバトルが始まる。繰り返しますが、私が実現したいのは医療的な管理の場をつくることではなく、豊かな生活の場をつくることです。その考え方を理解できない人は、他でやってもらうしかない。

極端に言えば、ここは大塚教という新興宗教の場で私は教祖様だと(笑)。その教祖の言うことに社会性があるかどうかはわかりません。ただ、どの程度、社会の共感を得られ、一緒に働いてくれる人を得られるか。また、この独特の価値観に賛同して自分の親を預けてくださるご家族がいるか。これだけが指標です。

当病院で働いてくれる職員についていえば、大塚教に入信するからには仕事のやり甲斐から生活の豊かさまで、他病院にいたときよりも良い思いをさせなければ信者としてつなぎ止められないから、それだけは実現しないと永続は難しいということです。

職員に対しては待遇面への配慮が大きいですか。

大塚 そうばかりとも云えません。確かに労働時間当たりの待遇は他より1~2割良いとは思いますが、より大きいのは自分達が大切にされていると実感できるかどうかです。大切にされれば人は幸せを感じ、幸せな人は自分よりも弱い立場の人にもしっかり尽くします。これがポイントです。

近年、介護人材の不足が問題になっていますが、当病院では介護職なら3~4人の応募者から1人、看護師も2~3人の中から1人を採用するくらいです。人材が集まるようにするためには、他より高い給与と待遇が不可欠で、当面目指しているのは介護職で年収450万円、看護師で750万円です。また残業等は原則禁止です。職員もそれぞれ家庭があり、私生活を犠牲にしてまでやらなければならない仕事などないからです。

貴院の小冊子の中で「挨拶は仕事に優先する」「病院はサービス業」と謳っています。なぜ、病院はサービス業であると考えられたのですか。

大塚 医療は、もともと施しの世界から始まりました。対価が得られるかどうかに関係なく、困っている人がいたら診るのが医者であり、そうであれば“上から目線”の施しの世界で良かったのです。昔は取りはぐれも多く、一部の金持ちからたくさんお代をもらって、その代わりお金のない人にもできる限りのことをして助けてきました。

ところが1961年に国民皆保険制度が誕生し、診療すれば必ず対価が支払われるようになりました。長い歴史の間にその構造が変わったにもかかわらず、医者は自分たちにとって都合がいいから未だに上から目線でやっていますが、医療者とはいえしっかり対価をもらって診療していることを忘れてはなりません。