医療法人社団慶成会会長の大塚宣夫氏は、自分の親を安心して預けられる施設を目標に1980年に青梅慶友病院を創設。そこで培った高齢者介護・医療の経験をもとに2005年によみうりランド慶友病院を開院した。大塚氏が目指すのは、その人の残された能力を見極め、医療の関わり方を根本的に見直し、生活の質を高めることに注力した“豊かな最晩年”の実現である。両病院はともすればホテルと見紛う居住スペースやギャラリーのような院内、豪華な食事等が注目されるが、社会を変えるという大塚氏の確固たるポリシーのもと、高齢者の医療や看護、介護について常に独自の取り組みを続け、確かな成果を出してきた。

連載3回の3回は、医療と介護、生活を一体的に提供する施策、介護サービスのあり方、どうすれば大往生できるのかなどについて、大塚氏にお話を伺った。

現金給付でサービスを自由に選択
運営コストと効率化を削減できる

限られた財源、あるいは人手不足が深刻化する中で、介護や医療を必要とする高齢者を社会としてどう支えていくのでしょうか。

大塚 国の財政状況や少子高齢化のさらなる進展を考えると、現行の制度や今までの発想の延長線上に未来は築けません。言うまでもないことですが、投入する社会資源とそこから得られる成果、高齢者の満足を指標とし、徹底した効率化を図るべきです。

視点は三つです。第一は高齢者をもっと社会的資源として活用すること。第二は社会保障制度の縦割りをやめ、年金・医療・介護の財源を一本化、一体化すること。第三は各種サービスの現物給付主義を見直し、一部、現金給付やバウチャー方式(※1)を導入することです。

高齢者の活用について、具体的にお聞かせください。

大塚 まず高齢者の定義を75才以上に変え、少なくともそれまでは自分の力で生活し続けるように社会の仕組みを変えることです。依存心よりも自立心をくすぐるような風潮があれば、高齢者ももっと元気になります。

社会保障財源の一本化をすると、どんなメリットがありますか。

大塚 高齢者の生活をよく観察すると、生活・介護・医療は相互に大いに関連があります。生活支援があれば、介護施設に入ったりしなくても済む、また医療と介護の境界も明確でなく、その間で大変な非効率が発生しています。一本化し、一体となって高齢者に対応するだけで20~30%の効率化が図られるでしょう。

サービスの現物給付主義を見直すとは、どのようなことでしょうか。

大塚 我が国では、今まで高齢者の医療や介護についてもサービスメニューや提供体制をすべて行政が決め、規格品を渡す仕組みで動いています。利用者からすれば選択肢が少なく、質的にも満足しないものが多い。加えて、様々な規制や手続きが複雑になり、実コストがとても割高です。介護保険によるサービスの現状を見れば一目瞭然です。

そこで発想を大転換し、介護や医療サービスが必要と認定された高齢者に、程度に応じてバウチャーや現金を給付し、あとは利用者がサービスを自由に買う方式にするのです。手続きは一気に簡素化され、各人の価値観が活き、コスト意識もめばえ、結果として費用対効果も高まります。その極端な形はベーシックインカム(※2)という考え方でしょうが、その片鱗を導入するのです。まず手始めは介護度に応じたバウチャー導入です。これだけで介護の世界は様変わりするに違いありません。

※1 バウチャー(Voucher)
教育訓練や保育サービスのように使い道が限定されて、個人が国から受け取る補助金のこと。

※2 ベーシックインカム(basic income)
就労や資産の有無にかかわらず、全ての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされる額の現金を無条件に支給するという社会政策。