心不全については、原因となるこうした疾患を早期発見・治療するとともに、再発や悪化を防ぐための薬物治療、生活習慣の改善に努める必要がある。また、高齢者の末期心不全については濃厚な治療で無理な延命を図るより、末期がんと同様に患者の心身の苦痛を和らげつつ、安らかにその人らしい最期を迎えることを目指した緩和ケアに注目が集まっている。

3回連載の第3回は、心不全の予防、受診のポイント、さらに高齢の心不全患者に対する診療のあるべき姿などについて、鳥取大学医学部 総合内科医学講座 病態情報内科学分野教授の山本一博氏にお話をお伺いした。

息切れ、動悸を感じたら
まずはかかりつけ医に相談

弁膜症や心筋症などを早期発見・治療し、心不全を予防するために、患者としてどのようなことに注意すれば良いでしょうか。

山本 例えば、上り坂を歩いていて息が切れる、動悸がする、咳が出るといった症状を自覚したら、まずかかりつけ医に相談し、適正に検査を受ける必要があります。一般の方々は、こうした症状を加齢や運動不足によるものと考えがちですが、実は心不全の初期症状であることも少なくありません。また、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や喘息といった呼吸器疾患の可能性もあります。

かかりつけ医を受診し、聴診など診察を受け、心電図やレントゲン検査、そして血液検査でBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の値を測定していただくことが心不全の発見に役立ちます。

BNPが高値を示す場合、循環器を専門とする医療機関で心臓超音波検査などさらに詳しい検査を受け、早めに必要な治療を開始することで心不全の悪化を防ぐことが期待できます。

医療の知識がない一般の人が、心臓病の検査について知っておくべきことは、どのようなことでしょうか。

山本 自分の健康に気を配り、適切な知識のもとで医療機関を受診していただくことが望ましいです。最近ではインターネットや一般向けの雑誌、書籍などで心臓病に関する情報があふれて患者さんの不安感を煽ってしまい、必要のない検査を医療現場で要求され、困惑することがしばしばあります。

米国の有名医療機関では、心臓超音波検査の費用は1回20万円以上かかりますが、日本では10割負担でも1回1万円程度で、3割負担であれば3000円程度しかかかりません。このように検査費用がきわめて安いことも相まって気軽に検査を受ける習慣ができてしまい、「日本人は検査好き」などといわれているようです。

また、「この病院で検査したから異常が出なかっただけで、違う病院で検査したら異常が出るかもしれない」などと誤解されて医療機関をわたり歩く、いわゆるドクターショッピングに陥り、同じ検査を何回も受けるような患者さんも少なくありません。

しかし、当然のことながら、心臓病の検査はあくまで個々の病態を正確に把握し、適正に治療方針を立てるために必要があれば行うものであり、多種多様な検査を何回も受けたからといって、必ずしもより良い治療に結びつくわけではありません。医師の説明を聞いて、自身にとって本当に必要な検査を適正に受けられることをお勧めします。