不整脈カテーテル・アブレーションの分野において、全国の大学でトップクラスの症例数と治療成績を有する筑波大学医学医療系循環器内科教室。高度な手技を実践できる数多くのスタッフを揃え、新たなアブレーション法を開発するなど、専門的な治療体制を確立している。特に難治性不整脈では年間400例以上を完治させ、埋め込み型デバイス治療では年間150例以上の実績を持つ。

その筑波大学医学医療系循環器内科教室を2006年から率いてきた教授の青沼和隆氏は、同大学の21に及ぶ各関連病院と共に、教育や研究をテーマに対話を重ね、より良い関係構築を模索してきた。青沼氏は「異なる要素の調和」を目標に掲げ、大学病院の連携や地域医療のあり方など、異なる要素の協調と融合に尽力している。

連載4回の第1回は、筑波大学医学医療系循環器内科学教授の青沼氏に、ご専門の不整脈、循環器領域での位置付け、さらに医学部教育などについてお話を伺った。

心臓の規則正しい収縮と拡張
その調律を科学する心臓電気生理学

まず青沼先生のご専門である電気生理について、教えてください。

青沼 心臓電気生理学とは、簡単に言えば心臓調律の研究のことです。心臓は非常に神秘的な組織で、最小のエネルギーで最大のパフォーマンスが発揮できるよう効率良くできています。例えば、寝ているときには脈を遅くし、いま私がインタビューを受けているように興奮したり、緊張しているときは脳が充分働けるよう、頭にたくさんの血液を送っています。また、マラソンをしている場合は末梢の筋肉、特に下肢の筋肉に血が届くよう循環を調節し、全身に充分な血液が行き渡るよう1分間に50~90回、1時間に5000回、1日に1万2000回、一生で20億回程度、規則正しい調律を保っています。

その循環を調節しているのが心臓で、収縮して全身に血液を送り出し、拡張して血液を全身から戻すのが心臓の役割です。心臓のパフォーマンスを最大限に生かすためには、規則正しい収縮と拡張、その調律が極めて重要になってきます。そして、この調律を研究、科学する学問が不整脈学であり、難しい言葉で言うと心臓電気生理学です。一般的には心臓電気生理学、英語ではカーディアック・エレクトロフィジオロジーと呼ばれています。

心臓は電気刺激によって動くことから、電気生理学と呼ばれるのでしょうか。

青沼 そうです。心臓の調律を担っており、電気的な興奮のためこのように呼ばれます。不整脈や電気生理を理解する1番簡単なツールが心電図です。この心電図は、1903年にオランダの生理学者ウィレム・アイントホーフェンが発明した心電計が契機です。研究を進める中で心臓が電気の刺激で動いていることを見つけ、心電計を開発した後、心電図が誕生しました。そして、これらツールの開発により、心臓のパフォーマンスを司っているのは規則性であることがわかってきました。そう考えると、本格的な不整脈の研究が始まって1世紀が経過したに過ぎません。

日本では少なくとも年間7万人が心停止発作で亡くなっていますが、これは心臓の中の心室という部屋が、毎分300回以上の速さで細かく動く心室細動によって発症します。心停止状態の人を救急隊員がAED(Automated External Defibrillator:自動体外式除細動器)を使って蘇生し、病院に搬送されてくると、植え込み型除細動器(ICD)を入れることがありますが、これは2次予防を考えた治療です。

もう1つの重要な電気生理学は神経筋に関わる脳神経学で、これを神経筋電気生理学と呼びます。神経筋電気生理学では脳の細胞同士のやりとり、脳から筋肉に刺激が送られる、あるいは神経の中で生じた異常興奮が末梢の筋肉へ伝達されます。

例えば、てんかんは脳波を記録すると心室細動と全く同じような異常細動興奮が脳内で生じています。心室細動と脳の局所的な細動が同じで、その意味では心臓電気生理と脳電気生理はよく似ていますし、人体における電気生理学にはこの2つの学問があるといえます。