緩和ケアのプログラム開発は、具体的にどのように進めていますか。

安斉 国循では、国内初の循環器に特化した緩和ケアチームをつくり、医師や看護師、心理療法士、理学療法士、ソーシャルワーカー、薬剤師などの多職種で構成しています。過去180件数のコンサルトで培ってきた独自の経験に加え、海外で行われているプログラムと合わせて新たなプログラムを開発している段階です。1年間でプログラムを構築し、2年目にそれを使って実施していく予定です。

NCVC循環器緩和ケアチーム実績

開業医による在宅での看取りのお話が出ました。現実には悪くなると本人も家族も入院を望むため、在宅での看取りはなかなか難しいのではありませんか。

安斉 その通りです。例えば、強心剤の持続点滴静脈注射は在宅では認められていません。保険承認されてないため、在宅で看取ろうとしてもできない状況です。また、在宅で心不全を診られる医師は少数で人材の育成面でも不十分です。看取りに取り組む医師に対して還元できる医療資源が必要で、これを確保するためにはやはり基本法のような法律が求められます。

小川 これは大事なポイントです。開業医の先生方はこうした状況を数多く経験されていたものの、それを学問としてはなかなか言えなかった。経済的なことを考えると、緩和ケアは学問として一般に認識してもらわなければ、諦めや見捨てたと誤解される恐れがあります。開業医の先生方が心不全の緩和ケアを行うことができれば、救急の満床も緩和される上、在宅で看取ることにつながっていくと思います。

若い人は絶対に助ける一方で、
高齢者はどこまで治療すべきか慎重に判断

心不全になると苦しいのですか。また、その苦しみを取るために、具体的にどんな治療を行いますか。

小川 心不全になると徐々に鬱血して肺に水が溜まり、おぼれたような状態になって苦しいため、患者さんは起き上がります。そうすると水が下に行くから楽になります。心不全患者が夜中に起座呼吸をするのは、水浸しになっていた肺の部分の水が下に落ちて一部だけ楽になるからです。入院して利尿すると良くなって退院する、そしてまた溜まって入院してくる。その繰り返しです。

安斉 呼吸困難が強い場合はモルヒネが比較的有効です。量としては少なく、がんで使う量の半分程度か、それ以下です。腎機能障害のある患者さんは注意が必要ですが、実際に使ってみると予想以上に安全に使えて、症状も取れ退院が可能になる人もいます。

小川 モルヒネを使うと肺動脈の圧が少し下がり、鎮静も図れます。苦しみが取れることで交感神経の緊張も緩みます。量を間違えば呼吸が止まりますが、例えば10ミリ使うところを3ミリ、5ミリ使うと非常に良くなります。ただ、怖くて使わないだけです。

モルヒネは最後の手段ですか。

小川 はい。そこまでいかなくても血管を拡張させたり、利尿薬を使うなど、まだまだ手段はあります。高齢者の場合は埋め込み型の人工心臓は入れず薬を使いますが、薬でだめなときにどうするか。これが課題です。

そして、いよいよ「もうこれ以上は無理だ」となれば、モルヒネを使う治療に入ります。ただし、その判断をするのは非常に高いレベルの医者であるべきです。そうではない医者がこれは無理だと言い出したら、無理ばかりになります。私が原則としてやっているのは、若い人は絶対に助ける。一方で高齢者にはどこまで治療するかを慎重に考える。早い時期から尊厳死、尊厳死と言い出すと、助かる命も助かりません。これは非常に難しいところですが、慎重に見極めることによって、本当に正しい終末期医療ができるのではないかと考えています。

第5回終わり(連載5回)