手術支援から海外交流が始まり、
病院全体への取り組みへ

アジアとの提携について、詳しく教えてください。

新浪 今回、当病院と年間600例の手術症例を持つバンコクの国立病院ラジャビティ・ホスピタルの院長同士で、MOU(Memorandum of Understanding:了解覚書)を結ぶことになりました。ラジャビティ・ホスピタルで心臓外科のチーフだった女性医師と私は、シドニー時代に同じトレーニングを積んでいましたが、あるときに再会して以来、その病院で手術のライブデモンストレーションを行うようになったのです。

それが5年前のことで、これを契機に交流が始まりました。彼女から人材を派遣してくれたら手術をさせるという申し出があり、当センターからは今年4人目を派遣しました。長い人で2年、現地で200例近くを執刀しました。

技術的には日本の方が優れていると思いますが、私の手法を学んだ日本の若手医師がバンコクで手術の経験を積める。一方で、向こうの医師たちは日本の最新術式を学ぶことができ、互いに技術を高められます。また、ラジャビティ・ホスピタルからも当方に研修に来るなど、様々な交流が深まっています。

やはり若手医師を手術ができる環境に身を置かせることがポイントですか。

新浪 もちろんそれもあります。手術ができるなら行かせたいと思いましたし、しかも給料もいただける。実はもう一つ、ミャンマーのヤンゴン・ジェネラルホスピタルで手術支援を開始したのも、そこです。このプロジェクトはミャンマー在住の友人に依頼されたのが始まりで、私のほかに麻酔科医と助手を連れ、2013年10月から2016年5月までに7回、年2度、1週間の滞在で8~10例、計60例に及ぶ手術を行ってきました。

野戦病院のようなところですが、ハンズオンエクスペリエンス(育成型経験)は日本にいるより圧倒的に多く、一年なら現地で手術をしたいという若手も出てきています。当初は医療施設も設備も整備されておらず、手術道具は日本から持参。徐々にお金が回り始めて、道具や薬なども購入してくれるようになり、今では日本から持参する荷物量は半分になりました。こうした変化を見ても、ミャンマーが日本の手術支援に期待していることがわかります。

ミャンマープロジェクト

現在、JICA(国際協力機構)が、脳と心臓のセンター、日本でいえば国立循環器病研究センター病院を造る話が進んでいて、ヤンゴン・ジェネラルホスピタルのスタッフがそちらにシフトすることになり、引き続き支援を依頼されています。そこで新しく建物を造るとき、私たちレジデントが泊まれる部屋を造って欲しいとお願いしました。というのも、非常に症例が多く、2018年まで予約で埋まっている状況で、宿泊できる場所が確保できれば、一年間は日本から人材を送る価値は十分にあると思っています。

この活動を広げていく目的について、あらためてお聞かせください。

新浪 こうした連携は、ともすると人体実験をしているような誤った解釈がされやすいのですが、私たちは彼らを利用しようとは考えていません。私たちは海外で手術をさせてもらい、彼らには新しい手術のノウハウを伝授しています。そうなると、新浪の下で本場の手術を学びたいという人が出てきて、1カ月の研修、半年の研修へとつながっていきます。そして、帰国した彼らの手術を見たさらに下の人たちが、自分も技術を磨きたいとやってくるようになる。成功の鍵は、互いに望んでいるものを提供できるギブ&テイクの関係にあります。

第2回終わり(第3回に続く)