2007年にがん、心臓病、救命救急医療に特化し、より高度な専門医療を提供する病院として開院した埼玉医科大学国際医療センター。中でも、心臓病センターは6つの専門部門を擁し、治療実績や医療体制が充実していることから、数々の病院ランキングにおいて常に上位に位置付けられている。2010年には日本に9施設ある心臓移植実施施設に認定され、注目を浴びている。

その専門部門の一つである心臓血管外科では、患者の体に負担が少ない低侵襲治療を掲げ、冠動脈バイパス術では97%以上が人工心肺を使用しないオフポンプバイパス術を行なうほか、カテーテル治療と外科手術の組み合せ治療ができる最新のハイブリット手術室を完備。また、大動脈弁狭窄症に対しては、全国に先駆けTAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)を導入している。

同センターの開院と同時に心臓血管外科教授として赴任した新浪博士氏は、虚血性心疾患のオフポンプバイパス術の第一人者であり、天皇陛下の執刀医として知られる順天堂大学医学部外科学教室・天野篤教授のパートナーとしても活躍。現在も年間300例を超える手術を執刀するトップクラスの心臓外科医である。

連載4回の第4回は、ハートチームの現状やPCIの標準化などについて、新浪氏にお話を伺った。

50対50のハートチームはない
循環器領域では内科の歯止めに

外科と内科の連携も課題の一つとして挙げられると思いますが、これについて、新浪先生のお考えをお聞かせください。

新浪 近年、ハートチームの重要性が高まっていますが、もともと欧米先進国でハートチームという言葉が出てきたのは、狭心症や心筋梗塞に代表される虚血性心疾患の治療以後です。一方、日本で盛んに言われ出したのは、TAVI(Transcatheter Aortic Valve Implantation:経カテーテル大動脈弁植込み術)の治療が始まってからです。

これもストラクチュアル・ハート・ディジーズ、つまりストラクチュアルが明らかになるにつれ、心臓弁膜症に対する治療はTAVIが登場するまでは外科治療、つまり手術が一般的でしたが、TAVIの登場により治療体系が大きく変わりました。もちろんTAVIは大動脈弁狭窄症に対する治療法の大きな進歩ですが、長期にこの弁がどうなるかなどまだわかっていない部分もあります。

心臓病を抱えた患者は診断をしてもらうために一般的には循環器内科の門をくぐるので、外科的な治療が良いのか、カテーテルによる治療が良いのかは内科医の胸先三寸というのが実情です。これを患者の年齢や合併症など、総合的に様々な科のスタッフで検討しようとして始まったのが「ハートチーム」カンファレンスです。

我々外科医は虚血性心疾患の治療で痛い目に合っているので、TAVIではその二の舞になるまいと大阪大学心臓外科教授の澤芳樹先生が指導力を発揮されました。ハートチームを構築する上で、内科が勝手に治療方針を決めてやることがないよう尽力されたことは、非常に素晴らしいことでした。ただ、本来、がんの緩和チームのように一人の患者に対して最も良い治療を行うことがハートチームの役割であるのに対して、循環器領域では内科に好き勝手なことをさせないための歯止めになっています。

最初から胸を切ってくれという患者はいないので、必ず内科を通って外科に紹介されてきますが、その内科の匙加減で、「この患者は自分たちで対応する」「このケースは外科に送る」といったように、これまでは性善説的に内科に任せていました。内科の方も、自分たちにはツールがないから外科に任せておけば良いと思っていたところ、大動脈弁緩置換術に関しては内科医でも治せるツールが出てきてしまい、これはハートチームの中でまずいとなりました。この流れは日本だけでなく、欧米も同様です。

内科と外科が連携して最適な治療方針を決めるといっても、実際には50対50のハートチームはあり得ず、内科か外科のどちらかが優位性を持って判断しなければ治療方針は決められません。