埼玉医科大学国際医療センターは、外科が優位のハートチームですか。

新浪 外科優位のハートチームです。そうなった理由はいくつかありますが、現在日本で認可されているTAVIの製品は2社で、そのうちの1社の治験を行うときに、内科ではなく私に声がかかったことが理由の一つです。この治験は4施設で実施されましたが、このうち3施設は外科主導で、残り1施設だけが内科主導で行われました。こうした経緯から当センターでは、TAVIについては外科優位で行われました。他に、大阪大学医学部附属病院や国立循環器病研究センター病院も外科優位のハートチームですが、TAVIが実施できる100施設ほどの中で、外科優位の施設は10にも満たないと思います。

患者にとってより良い医療の提供は大前提として、では、内科と外科が連携したハートチームのあり方とはどのようなものでしょうか。

新浪 難しいのは、互いに選べないことです。私たち外科医は内科医を選んだわけではなく、内科医たちも外科医を選んで今に至るわけではありません。ただ、手前みそですが、埼玉医科大学国際医療センターの循環器内科にとっては、優れた外科医たちと連携できていることは良かったと思います。うちが未だにバイパス手術を150例も実施できているのは、「埼玉医科大学国際医療センター心臓血管外科であれば、PCIではなくバイパス手術でもきちんとした治療をやってくれる」と認識されているからですが、そうではないところは多数あります。患者の状態から診て良い先生がいるなら外科に治療してもらいたいが、うちのチームはそうはいかないから、TAVIやPCIで治そうといったことも実際にあるのです。

施設ごと、それから外科と内科のスキルの差異があるということですね。

新浪 ハートチームをどの病院でも通用するよう一般化することは困難です。ある施設は循環器内科のレベルが高いが外科はそうでもない、またある施設はその逆で、さらに別の施設は内科と外科のスキルが共に高い、あるいはスキルは同等だがレベルは高くないと様々です。ですから、その施設に応じたハートチームを構築して目の前にいる患者に、どの治療がベストであるかを施設のスキルやレベルに応じて判断することになります。しかし日本は内科外科共に施設数が多すぎるため、ハートチームによる治療方針についても全国的に見て相当大きな幅があるはずです。結局、この話は前述した専門医や施設のレベル差の話に全てつながってきます。

こうした状況を内科医はどう考えているのでしょうか。

新浪 自分のところに優れた外科医がいなくても、外に患者を送ることは嫌がるので、何か起きたときにすぐ助けてくれる人がそばにいて欲しいとは思っているでしょうね。だから内科医にとって、施設の集約は簡単には賛同できない話です。

正しい適用を明らかにする
症例データベースへの登録を促進

前回、心臓外科医2000人を500人に集約化していくというお話が伺いましたが、PCIについても標準化や集約化が求められていきますね。

新浪 今後はスコア化、標準化は不可欠です。例えば、外科医から見て冠動脈狭窄が50%あるかどうかという症例に対して、我々外科医は治療の対象とはしません。なぜなら治療の必要がないからです。しかしこういった病変を平気でPCIで治療する内科医がいるのは事実です。少なくとも外科領域において、必要のないところにバイパス手術を行なったという話は聞きません。重要なのは、患者中心の医療であること、そして、そのための治療が正しく行われているのかどうかを厳しく監視するシステムです。

なぜバイパス手術では、無駄な治療が行われないのですか。

新浪 狭窄度が50%以下の冠動脈は病気があるかないかであれば、「ある」になりますが、有意ではないためです。そういった病変はガイドライン上、治療すべきではないということになっており、我々外科医は科学的根拠に基づくガイドラインを遵守しているからです。さらに、バイパス手術は狭窄度が低いところに行うと自分の冠動脈の血流量が多いため、新たに作ったバイパス道と血流が拮抗し、バイパスの方が負けて結果的に詰まってしまう。そういった病変を治療のターゲットとしない理由です。

内科は狭窄を起こしている病変そのものを治療します。ここは我々外科医とは根本的に異なります。外科医は、病変そのものはいじらず病変の先に新しい道を作ってやる。だから冠動脈バイパス術と呼ぶのです。内科では狭窄度が緩くても、治療を行うことで狭窄を0に出来た方がベターだと考えているかもしれません。しかし、治療の必要がない上に、血管を無理に広げることによる血管損傷や、それに起因する血栓症などの合併症を生じる可能性があります。

安易にPCIをやってしまうと予後も悪くなます。特に糖尿病の3枝病変はバイパス手術の方が良いことは、世界の多施設無作為抽出試験でも明らかにされています。こうした状況は、内科領域のリーダーが自浄作用として変えていくことが重要で、私たち外科から発信すると単なる対抗意識として捉えられてしまいます。