超高齢社会を迎え、都市部を中心に高齢者向け住宅の整備が進んでいる。そうした中で、野村不動産ウェルネスは2017年10月、千葉県船橋市に第1号のサービス付き高齢者向け住宅「OUKAS 船橋」を開設する。

一般的なサービス付き高齢者向け住宅は、介護サービスを提供する住宅という視点であるのに対し、同社は「街と、住まいが人を健康にする。」という新発想を掲げ、全世代が快適に過ごせる持続可能な街に、運動プログラムや地域と密接に絡み合うイベントなどを通じ、心と体の両方の健康を維持・増進していく暮らしづくりを目指すという。

「OUKAS 船橋」は、敷地面積4632平米、鉄筋コンクリート6階建て、1R~2LDKの125戸を供給。共用部にはレストラン、ゲストダイニング、大浴場、フィットネススタジオ、コミニュティカフェ、ゲストルーム、カラオケ・シアタールーム、ライブラリーラウンジ、コンシェルジュデスク等を備える。また、施設内にはツクイがデイサービスと訪問介護事業所の開設を予定している。

連載4回の第2回は、引き続き、野村不動産ウェルネス 取締役専務の松本裕樹氏に、高齢者住宅事業での今後や課題、自立型高齢者住宅の必要性などについてお話を伺った。

高齢者住宅市場における顧客ニーズと
市場確立に向けた業界の課題を探る

高齢者住宅のニーズとしてどのようなものが存在し、今後の高齢者住宅業界はどんな進化を遂げるとお考えでしょうか。

松本 高齢者のニーズは今後も多様化しますが、主として年齢によって変化するものと捉えています。つまり、検討を開始する時点の年齢で、望むものが変化するということです。これは、寿命を迎えるまでの期間、身体上の不安を大雑把に頭の中で思い描いており、その不安の感じ方は人によって差異があるため、実行に移す年齢が異なってくると理解しています。

では、具体的ニーズを年齢別に考えてみます。年齢が若いうちは、多くの人が自分は生涯健康で過ごせると漠然と思っているため、この段階では所有意欲が強くなります。例えば、将来、子どもたちに資産を残してやりたい、不動産にしておくことで相続税は極力少なく留めたいといったことです。このニーズに応えるものが、最近首都圏でも供給が見られるようになったシニア分譲であり、年齢でいえば70歳前後までの方々のニーズといえます。

次に、70代~80歳前後の方々ですが、一般的にはこの段階からの所有に躊躇を感じ始め、ニーズとしては賃貸型の高齢者住宅を求める声が増え始めます。実は、この年代の方々のニーズは複雑です。現在の日本は核家族化が進行しており、自立生活が可能な方にとっても、いつ何が起きるか、またその時に人の目がない環境にある可能性がある。しかし、世の中の高齢者住宅のほとんどが介護型であり、ではシニア分譲かというと、前述したように、「今さら所有までは‥」という結論になります。野村不動産ウェルネスで作り上げていきたい市場は、まずはこの空白地帯です。

そして、最後に介護型高齢者住宅。今後は、高齢化率の増加に伴い、特養、介護付き有料老人ホームだけでなく、介護型サ高住ですら、相当難易度の高い介護を受け入れることになるはずです。実際、訪問介護や定期巡回で支えるしかない介護型サ高住は、それを支えるスタッフの負荷も相当なものになり、人材確保で劣後していくものと考えます。

現状、多くの事業者が介護型サ高住もしくは住宅型有料老人ホームでの事業を推進していますが、その事業者の方々に極力負荷を与えないよう川上で介護を堰き止めることが重要です。一生自立生活を目指し、健康寿命の延伸を目指す事業者の誕生は、今後の高齢者住宅業界の構造をバランスさせるためにも必須であり、弊社が成功することで、追随する事業者が出てくることを心から望んでいます。

つまり、核家族化が進行する日本には自立から介護に至る全ての方が、健康型・介護型双方の高齢者住宅を必要とし始め、業界全体で必要量をしっかりと見極めながら、各社が強みを発揮しあい、高齢者層の全てのニーズに応えていく必要があります。