今後、御社はサ高住にも自立市場を築くということでしょうか。

松本 本来、サ高住は見守りと生活相談機能のみを条件とし、入居しやすい高齢者賃貸住宅の整備を行うことが、当初の目的と理解しています。しかし、オペレーターが介護事業者しかいない現状では、全て介護住宅化せざるを得ないという、業界特有の理由がありました。

しかし、自立市場は介護報酬が得られないため、収益性だけを捉えれば介護型に流れたくなります。理念を持ち、自社が日本においてどのような役割を担うのか、担えるのか、経営層としっかり議論し、理解を深める必要があるため、市場拡大は簡単には進みません。

昨今、静かな広がりを見せるシニア分譲
その課題とは何か

自立型のもう一方、シニア分譲は市場が確立されると捉えていますか。

松本 前述したように。高齢者住宅ニーズは概ね検討時点の年齢で自然と棲み分けされていくと考えており、シニア分譲市場の確立は可能と捉えています。しかし、現状の市場を見回すと、市場全体の成長まで視野を広げた商品開発はなされておらず、各社が思いのままに商品企画を行っている段階で、課題、問題を整理できずに進んでいる印象です。

具体的には、シニア分譲で起こり得る課題や問題とは何でしょうか。

松本 まずマーケットを成長させるため、という全体感からお話しします。シニア分譲における顧客ニーズは「資産」です。マーケットが確立するためには資産目減りが低いほど、将来のニーズが高まり、逆に資産目減りが大きいほど、将来のニーズは小さくなる、という関係性が生まれることとなります。これが市場確立の核であり、本質です。

実は、シニア分譲は1970年代から確認できますが、このマーケットが成長しなかったのは、2点あると思っています。1つは、オペレーションが伴い、一般分譲より手間が多く、難易度も高いこと。一般的なマンションを作れば売れた人口増加時代に、マッチしなかったという理解をしています。

もう1つは、一般分譲市場より高価格、高ランニングコスト(管理費・修繕費・サービス費等)の富裕層向け商品であったため、中古市場での下落幅が極端で、資産が資産ではなくなってしまったこと。つまり、セカンダリーマーケットが築けなかったことに起因します。

そうなると、単に売るのではなく、どんなものが求められているかを考えるところから始まりますね。

松本 その通りです。先の本質を見抜いた、正しいマーケットを創ることが重要です。例えば、シニア分譲の共有部は一般分譲よりも広くなります。概ね1.2~1.3倍使い、食堂や大浴場などを併設します。しかし、一般分譲もシニア分譲も同じ土地で作れば、当然土地の購入価格は同一です。これにより、売り面積、つまり専有部が少ないシニア分譲は、自ずと高い単価設定になるという状況が生じます。共有部が多いのに、専有面積を一般分譲の例えば70㎡に設定しようとすれば、一般分譲の1.2~1.3倍の価格で売る必要が出るため、20年後のリセール時に、大幅な価格下落が起きる可能性が高まるという構図です。

地域には、新築時に超えてはいけない価格上限ラインがあります。これは、一般分譲だけでなく、シニア分譲でも同様だということを、改めて不動産事業者が認識する必要があります。

例えば、一般的なファミリー分譲で、70㎡・5000万円が相場のエリアがあるとします。これをシニア分譲で、1.3倍の70㎡・6500万円で分譲したとします。新築時は何とか売り切ったとしても、中古時の価格下落はシニア分譲の方がより大きくなります。理由は簡単です。当初の価格がマーケットの上限を超え、特殊な富裕層に高値で売ることに成功してしまったから、という要因が存在するためです。これを続ければ、シニア分譲は価格目減りが激しい資産とレッテルを貼られることになり、マーケットの拡大は望めなくなります。だからこそ各事業者が、正しいマーケットづくりを心掛けることが大事になるのです。