茨城県の東南端に位置する神栖市は、東は太平洋に面し、南側・西側には利根川が流れ、南北に長い形状をしている。同市は、1960代以降、鹿島港を中心に鉄鋼や石油といった重化学コンビナートの街として発展してきた。その神栖市の公的病院である鹿島労災病院と神栖済生会病院は、共に医師不足による経営難が続いており、2病院を再編統合する必要性が叫ばれてきた。

両病院とも公的病院として機能しているが、鹿島労災病院は2012年度以降、毎年10億円以上の赤字を出し続け、神栖済生会病院も2014年度は約1億6000万円の赤字となり、厳しい経営状況に陥っている。また、2016年4月時点での常勤医師数は神栖済生会病院20名、鹿島労災病院14名まで減少し、救急患者や重篤患者の受け入れが不十分な上、大学機関等からの医師派遣も困難な状況が続いている。

こうした状況を打開するために、関係者に学識経験者を加えた「鹿島労災病院と神栖済生会病院の今後のあり方検討委員会」が発足され、十分な協議を重ねて2016年5月には協議内容をまとめた検討結果報告書を提出した。

連載2回の第1回は、再編統合への動き、その目的、魅力ある病院とは何かなどについて、筑波大学附属病院神栖地域医療教育センター長の家城隆次氏と、筑波大学医学医療系循環器内科学教授の青沼和隆氏にお話を伺った。

再編統合に関する住民説明会
地域によって認識に差も

2017年2月11日、神栖市において病院の再編統合に向けた住民説明会が開催されました。そこでの反応はどのようなものだったのでしょうか。また、これに対する家城先生のお考えをお聞かせください。

家城 住民説明会は、2月11日の第1回から4月2日まで、計3回開催しました。1回目の説明会では再編統合について理解できない住民の方々が多かった。この理解できないというのは、住民の皆さんは単純に「わざわざ統合しなくても、神栖市は財政的には困っていない」あるいは「鹿島労災病院をそのまま存続して税金を投入し、良い病院にしてくれればいいじゃないか」と思っていたからでしょう。やはり1回の説明では理解が得られないと考え、2回目、3回目は現状の問題、再編後の姿や医療機能など、様々な資料を出して説明したところ、約8割の方が再編パターンについてよく理解できたと答えています。

この「よく理解できた」というのは、再編統合に賛成という意味でしょうか。

家城 これは、「医師不足による経営難といった事情があるなら仕方がない」という意味での理解であって、これまでは統合せざるを得ない事情すら理解できない状況でした。

■神栖済生会病院と鹿島労災病院の再編統合に関する説明会
 地域医療シンポジウムに寄せられた市民の声

2病院の位置関係、地域性を教えていただけますか。

家城 それぞれの病院のある場所は似たような地域で、2つの病院間は約12~13km、車で20分ほど離れています。新しく統合した病院は神栖市の中央部での開院を予定しており、波崎地域や廃院予定の鹿島労災病院のある近隣の方々は非常に関心を持っています。

一方、神栖市の中心街であり、人口も集中している神栖済生会病院の近くには他にも病院があるため、この近隣の方にとってはさほど問題ではないように見受けられます。

医師不足から経営難に至った経緯をお伺いします。そもそもなぜ医師数が減少してしまったのですか。特に、鹿島労災病院は2011年に33名在籍していた常勤医師が、2年後の2013年には10名となっています。

家城 これまで鹿島労災病院には千葉大学の医局から整形外科医が派遣され、整形外科を中心とした治療を行っていましたが、大学としては県内なら派遣できても、県外まで出している余裕はないなどの理由で医師を引き揚げたと聞いています。

その根本には医局に医師が残らないという時代の流れもありますね。また、鹿島労災病院では年間10億円の赤字を出していますが、医師が減少すると人件費が減ります。なぜ赤字が増えるのでしょうか。

家城 医師は辞めても、看護師や技師、薬剤師はほとんど退職しません。つまり純粋に売上だけが減る。もちろん医師1人で稼ぐわけではありませんが、医師は自分自身の給与の何倍もの売上を上げることができます。だから、医師がいなければ看護師や技師、薬剤師がいくら頑張っても売上を増やすことはできないのです。

では、3回の住民説明会で地域の理解や支援を得ることはできたと思われますか。

家城 少しは得られたと思いますが、問題は、神栖済生会病院の力が地域にアピールできていないことです。神栖済生会病院は中小病院というイメージで、診断力や治療力があまり認識されていません。地域の人たちが具合悪くなったときにどこの病院に行くかというと、まず神栖済生会病院に行こうとは思わない。体の不調で困ったときに最初に思い浮かぶのは、白十字病院や小山記念病院、国保旭中央病院です。診断や治療に関して、住民の信頼が十分に得られていないことが大きな課題です。