地域中核病院で研修することで
研修医にもメリットを

ここまで医師不足に対する方策についてお話を伺ってきました。家城先生は、新たな専門医制度について、どのようにお考えでしょうか。

家城 今は研修指定病院なら大都市の大学病院でも地方の病院でも、どこで研修をしても良いのですが、地域の中核病院で研修することによって、何らかのメリットが得られる形にしなければうまくいかないと思います。地域の医療を支えているのは、やはり地域の中核病院なので、そこから医師を引き揚げてしまうような新専門医制度はまずいのではないかと思います。

専門医のシステムは、例えば呼吸器であれば呼吸器の専門医を目指すことが目的であり、本来、配置先は関係ないはずです。技能と知識があれば試験に合格し呼吸器の専門医が取得できますが、今は専門医制度によって研修医が異動するので、そこまで考えてもらわなければ困ります。

一例を挙げると、救急指定病院には公的な補助金が出ていますが、救急病院と謳っておきながら実際には夜勤の医師ではなく、当直医が1人でやっているところが多い。つまり救急指定病院の当直医は、救急の資格を持たないアルバイト医師でできてしまう。しかし、それでは救急医は育ちません。例えば、地域の救急指定病院や中核病院の救急診療科で何年か勤務したら資格が得られ、救急病院で当直しても構わないというシステムを新専門医制度の中でつくるべきです。

アルバイトの当直医では、患者も安心して救急に行けませんし、救急病院ではなくなってしまいます。

家城 その通りです。公的資金を出して救急指定病院という看板を挙げさせるのであれば、当直する医師も救急に対応できる医師でなければ立ち行かなくなります。例えば、自分は耳鼻科が専門だが、救急総合病院で1~2年やって救急専門医の資格を持っているので、夜中に急患が来たら腹痛も診られるし、肺炎の初期の治療はできる。詳しいことは翌日に専門医に診てもらって、その間は処置できる。そうしたことができる医師を配置しなければ救急指定病院とは言えません。

それが総合診療医の育成にもつながっていきますね。

家城 新たな専門医制度が動くときに同時に作って欲しいのは、例えば救急指定病院で当直するときには必ず研修修了証を提出させるシステムです。どこの地域でもそこそこの中核病院であれば救急指定病院になっているので、その病院の救急診療科、あるいは総合診療科で指定された期間の研修を受けていることを条件にする。そうすれば取りあえずの初期診療は何でもできるようになります。このケースは重症だから専門医を紹介する、これは風邪だから点滴と抗生物質を投与するといった判断ができる資格を持った医師しか当直できないよう、制限を加えればいいのです。

自分の専門以外は全く診られない医師が当直しているから、救急患者のたらい回しといった問題が起きるのですね。

家城 それを現時点で現場の当直医師に言うのは酷です。専門以外の診療は実際にできないし、自信もない。そうではなく、救急診療科や総合診療科で1年でも研修を受けるシステムを作ることが重要です。地域の救急指定病院で定期的に研修を受けるシステムを構築すれば、夜間の患者の診療は今ほど困らなくなります。一方、アルバイトで当直するときも資格が必要となれば、若い医師も、それなら指定された期間は頑張って資格を取ろうとなる。資格がないと救急指定病院で当直のアルバイトができないというシステムです。やはり救急がしっかりしなければ、その地域の住民の安全は守れません。

若い医師にとっても自分の守備範囲が広がることになります。

家城 今は、大学にいてほとんど救急患者を診たことがない人も専門医を持っているし、幅広く診療してきた人も専門医を持っていて、そこに差はありません。救急指定病院で当直するときには資格がないとできないと明記するだけでも大きな改革になります。問題は、いかにそれを構築していくかです。単にやればいいのではなく、どんな病院で研修させるのが良いのか、その期間はどれくらいなのかなど、今後検討が必要になってきます。

先日も、新しい専門医制度のあり方について筑波大学附属病院救急・集中治療部の教授と話し合ったところですが、良い機会なので、県や厚労省にも働きかけてこうしたシステムを構築し展開させていきたいと考えています。

第2回終わり(連載2回)