平成24年1月、広島大学病院に心不全センターが開設された。同センターの活動目的は、心不全患者の心臓病再発や重症化予防である。広島県では、こうした心不全センターを中心に、各2次医療圏に1つ、地域心臓いきいきセンターを整備し、心不全地域連携体制の強化に取り組んでいる。県が全面的にバックアップする先進的な取り組みについて、この事業の立案者であり、『高齢心不全患者の治療に関するステートメント』策定委員長も務めたのが、広島大学大学院歯薬保健学研究科 循環器内科学教授の木原康樹氏である。

連載2回の第1回は、心不全の現状と課題、治療における変化、心不全センター設立の経緯と成果などについて、木原氏にお話を伺った。

心臓は非再生臓器
耐用年数の目安は50年

木原先生は「21世紀は心不全の時代である」と警鐘を鳴らされています。最初に、この言葉に込められた問題意識をお聞かせください。

木原 21世紀の日本の人口動態は、誰もが知る通り逆ピラミッド型になっています。世界中のどの国も経験したことがない超高齢社会を迎えた日本で、今後大きな社会的問題となるのが心不全です。

木原康樹氏
日本循環器学会循環器疾患診療実態調査報告書
(2016年度実施・公表)

心不全とは、心臓の非再生性に強く関係する病態です。わかりやすく言えば、赤ちゃんのときにはピカピカの新車状態だった心臓が、長く使っている内にあちこちガタが出てくるようなものです。だからといって心臓を取り替えることは基本的にできないし、リニューアルも無理です。

心臓の寿命を考えれば、耐用性はざっと50年ぐらいです。実際、戦前の平均寿命はそれぐらいだったはずで、だからこそ織田信長は「人間五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり。ひとたび生を得て滅せぬもののあるべきか」と語ったのでしょう。50歳を過ぎると様々な不具合が心臓に生じ始め、その重積により引き起こされる疾患が心不全です。

ここ最近、高齢者の増加に伴い、年間の新規心不全発症数は爆発的に増えています。また、年齢を重ねるごとに疾患罹患率は高まります。ということは今後、後期高齢者が確実に増えていく日本においては、限られた医療資源の活用という側面からも、心不全が大きな社会的負担になると考えて間違いないと思います。