患者の意識を変え、広島モデルを広く定着させる上での課題は何でしょうか。

木原 とにかくより患者の近くで活動を展開することです。広島では7つの2次医療圏に地域心臓いきいきセンターを設置しています。広島県全体の人口が280万人であることを踏まえれば、単純計算で1センター当たり受け持つ人数は40万人です。潜在的な患者も含めると、県全体での患者数は3万人から5万人と推定されるので、患者の家庭にまで手が伸びているとは決して言えません。

病状が落ち着いており、通院できる患者については、循環器の専門医以外の先生方の力も借りなければ対応できない。心不全患者の大多数が高齢者であることを踏まえるなら、そうした人たちの近くにいる在宅訪問看護ステーションや地域の開業医、さらには薬局などにも私たちのネットワークに入ってもらい、よりきめ細やかな一次医療圏ともいうべき体制を構築するなど、発想転換とシステム再構築が必要です。

広島県では、こうした取り組みを県が全面的にバックアップしてくれ、平成30年度からスタートする第7次の医療計画にも組み込まれています。国からも注目されていることで、関係者のモチベーションが高まっています。

手なずけられた心不全と
暴れる心不全

患者としては、心不全と生涯どのように付き合っていけば良いでしょうか。

木原 心不全という疾患についての理解を深めて欲しいと思います。この点に関しては、私たち医師自身も反省すべき点が大いにあります。これまで心不全という疾患について、平易な言葉でわかりやすく説明する努力を怠ってきました。

これががんや認知症なら、どのような病気なのかを患者がすぐに理解できます。ところが、心不全の場合は、ほとんど自覚症状のない状態から命に差し迫るレベルまで、症状の現れ方が千差万別です。だから心不全は「病気」とは言わず「病態」と表現するしかありませんが、その結果、患者にわかりにくい表現となっています。

がんなら転移の問題はあるにせよ、病巣を取り除けば病気が完治する可能性があります。しかし、心不全は根治する可能性がありません。しかも、人によりスピードは異なるものの、歳を重ねるごとに確実に進行していき、最後は死に至る。こうした心不全ならではの特質を理解してもらう必要があります。