高齢者の心不全と、
どのように向き合うべきか

高齢者の増加に伴い、心不全患者の増加も避けられません。心不全治療の今後の課題について、どのようにお考えでしょうか。

では、超高齢者の心不全にどのように対応すべきなのか。この年代への対応に関しては、今のところ延命療法のエビデンスしかありません。仮に90歳代で、すでに寝たきりで意思疎通を図ることが難しい患者に対して、どのような治療を施すべきでしょうか。延命治療のあり方についても、これから議論が必要です。

高齢者に対しては、薬の投与についても新たな観点からのデータが必要です。心不全の薬は種類が多く、中には薬の服用により気だるくなるようなものもあり、薬の選び方には慎重を期す必要があります。さらに、日本老年医学会が「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」で指摘したように、多剤併用は避けるべきです。

また、薬の使い方については他にも議論すべき点があります。例えば利尿薬を多用すると、寿命に影響する恐れがあります。しかし、水が溜まってむくんでいる患者にとっては、むくみは不快な症状であり、利尿薬を服用してでも、むくみを取った方がQOLは高まります。このバランスの取り方が重要になってきます。

高齢者に対して、どこまで治療を施すのかが問われそうです。

米国などでは、良し悪しは別問題として、お金がなければ治療を受けることさえ不可能です。日本では90歳を超えた患者に対しても、延命治療を求められたら基本的に断りません。医療に対する考え方や文化的背景が欧米とは全く異なるからです。ただし、医療費は個人が負担していなくとも、社会全体で負担している事実は認識しておくべきです。

一方で、医学はすさまじい勢いで進歩し続けています。心臓移植の対象年齢は65歳までと定められていますが、植込み型人工心臓については明確な年齢制限はありません。人工心臓の出来が良くなっているので、これを使えば何年も生きられる可能性が出ています。

増山先生が策定委員として関わられた「高齢心不全患者の治療に関するステートメント」でも、「高齢心不全患者に対する終末期医療の指針」に一章が割かれていますね。

例えば大動脈弁狭窄症の治療法として、ダ・ヴィンチによる大動脈弁形成術が行われていますが、中には95歳の患者を対象に行われるケースもあるようです。その意義はコストを含め様々な観点から考慮していく必要があるでしょう。