手術によるゲインの最大化を目指す

チームを組んだ場合、内科医と外科医はどのように協力していくのでしょうか。

夜久 現状は内科的治療の限界となった時点で、外科医に回ってくるケースが多く見られます。もちろん、内科医はベストを尽くし、患者と向き合った外科医も最大限やれることをやろうとします。手術を行う際には、ゲインが大きいほど良いわけです。

具体的には心不全の患者で、冠動脈の様々なところが詰まっていて、僧帽弁の逆流もひどく、左心室もかなり大きくなっていて、心筋が死んでいるところもたくさんある。こうしたケースなら劇的に改善できる可能性が高い。

冠動脈バイパス術、僧帽弁形成術、左心室形成術などできる手術を全て行うことで、患者は大きなゲインを得ることができます。手術自体は大がかりなものとなりますが、その代わり現状から、かなり良い状態へと一気に持っていくことができます。

ということは、逆のケースもあり得るわけですね。

夜久 その通りです。同じような病態の患者でも、外科医に回ってきた段階ですでに様々な施術を受けている場合があります。冠動脈はPCIで広げられており、僧帽弁はペースメーカーによる同期治療により、逆流は軽度に抑えられている。しかし心機能が低下してきた。となると、外科医に残された領域は左心室しかありません。

ところが、体内に機器が入っていると、MRIを撮ることができない。すると、どこの心筋が死んでいるのかが特定できず、下手にメスを入れることはできません。このような場合でも、長期的視点に基づいた戦略的な治療を行っていれば、同期治療のペースメーカーを入れる前にMRIを撮っておくなどの対処ができているはずです。それが内科と外科の連携が求められる所以です。

手術で対応できる範囲が乏しい場合には、侵襲に見合ったゲインを得られない恐れがあります。逆にいえば、外科医が手を付けることのできる部分が多く残っている患者ほど、手術による侵襲を補って余りあるだけのゲインが得られます。

がんと同様、心不全も
緩和医療が求められる時代に

高齢の心不全患者が増えていく今後、どのような対応が必要でしょうか。

夜久 問題は65歳以上の患者です。それ以下なら、順番が回ってくるかどうかは別として、心移植という最終手段があります。しかし、その年齢を超えてしまうと、徐々に治療の選択肢が限られていきます。

仮に70歳で拡張型心筋症の患者がいるとします。僧帽弁の逆流が高度で点滴で強心剤が投与されている。だからといって、こうした患者に僧帽弁形成術や僧帽弁置換術を行うべきなのか。現状のまま放置しておくと、やがては血圧を維持できなくなる恐れがあります。だからといって、この状態での僧帽弁手術は相当リスクが高い。実際、どのように対処すべきか。これだと言い切れるような最適解は、恐らく見つからないでしょう。

治療の選択肢が限られると、最終的にはどうなるのでしょうか。

夜久 心不全の最終段階では、がんで行われているような緩和医療で対処せざるを得ないと思います。こうした問題は内科医と共に考えていくことが重要です。

もとより薬剤治療をされている先生は、自分の患者に対して、どのタイミングで、どのような外科的治療を選ぶべきか、長い時間軸で考えているはずです。だからハートチームカンファレンスが効果的であり、カンファレンスのリーダーは内科医の先生に務めてもらうのが良いと思います。

何より必要なのは、心不全という病気の恐ろしさを、より多くの人に理解してもらうことです。可能な限り心不全にならないよう、1人でも多くの人が予防に力を入れてくれるよう期待します。

第2回終わり(連載2回)