心不全ナショナルデータベースの意義

AMEDの支援を受けて始まる心不全のデータベース構築とは、どのような内容でしょうか。

筒井 がん患者は「がん登録」によって種類別の患者数が把握されていますが、心不全については患者数そのものも掴めていません。そこで全国の施設で心不全の治療のために入院した患者を1万人ピックアップしてデータベース化します。具体的には、臨床像や行われた治療内容と予後、治療による予後の違い、その地域差などについて、2018年から5年間を振り返る後ろ向き研究を行います。

2018年の5年前、つまり2013年の1年間に日本循環器学会の専門医研修施設に入院した約8万人の心不全患者の中から、1万人をランダムに抽出し、心不全の原因となった基礎疾患、併存症と合併症、急性期の治療内容や入院中の予後などの臨床情報を収集してデータベース化します。

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筒井先生は以前にも心不全のデータベース構築に取り組まれていますね。

筒井 以前実施した「JCARE-CARD」研究は、2004年1月から2005年6月にかけて、慢性心不全の増悪により入院した患者2675例を対象に、臨床後と予後に関するデータを集めた前向き研究です。このときの経験も踏まえて、今回の研究を設計しました。

前回と比べれば、患者数が1万人で全国を網羅、病院の大きさも偏りのないようにするため悉皆性の高いデータベース、いわば心不全に関するナショナルデータベースを構築できると考えています。入院中の治療内容、退院時に処方した薬物治療と非薬物治療などのデータも詳細に収集し、日本の心不全患者の全体像を明らかにします。参加する施設は、全国で150ぐらいになるでしょう。

かなり大がかりなデータベースですが、構築にあたっての課題は何でしょうか。

筒井 全国各施設の先生方の協力が欠かせません。5年間を振り返っての正確なデータ収集は、先生方に多大なる負担をかけることになります。多くの基幹病院では病診連携を進めているので、退院後は診療所などに任せているケースがほとんどでしょう。予後調査も決して簡単ではないと思いますが、それでも何としても全国規模のデータベースを作り、我が国の心不全医療の現状を踏まえ、今後取り組むべき課題を先生方と共有したいと考えています。

ヨーロッパや韓国では、すでにこうしたデータベースが構築され治療に活用されています。日本の心不全治療の質を高めるために、さらには心不全による入院患者を減らすためにも不可欠なデータベースです。

現在、データベースの構築作業に取りかかっているところで、3月頃からデータ登録ができるようになります。多くの先生方の協力を得て、充実したデータベースを構築し、日本における心不全治療の向上に役立つよう取り組んでいくので、各施設の先生方にご協力をお願いしたいと思います。

第2回終わり(連載2回)

設立以来、体温計や注射器、国内初の血液バッグなど、幅広い医療機器の製造・販売を手がけ、近年ではカテーテルや人工心肺装置などを中心に心臓血管領域の製品を広げ、グローバル企業へと成長を遂げたテルモ。

また、2002年からは再生医療に取り組み始め、大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科教授の澤芳樹氏との共同研究により、患者の太ももの筋肉から採取した細胞を培養してシート状にし、患者の心臓表面に移植するハートシートを開発。心臓移植を待つ重症心不全の患者や家族にとって、こうした再生医療への期待は高まっている。

連載3回の第1回は、心臓病領域への事業展開と課題、内科と外科の連携などについて、テルモ 心臓血管カンパニープレジデントの鮫島光氏にお話を伺った。

インターベンションと外科手術に貢献
心臓血管カンパニー

はじめに御社の事業領域の中で、心臓病分野への取り組みについて教えてください。

鮫島 弊社がこの分野に参入するきっかけになったのは、心筋梗塞や狭心症といった冠動脈虚血に対して市場のニーズが顕在化しており、非常に大きなポテンシャルを感じたためです。アプローチとしては、インターベンション(血管内治療)と外科のCABG(冠動脈バイパス手術)の2領域で、インターベンションでは80年代にガイドワイヤーを、外科に対しては人工肺を発売したことがスタートになりました。

その後、インターベンション、外科の領域とも事業を拡大していく中で、特に外科では1999年に米国3M社から人工心肺事業を買収しました。現在、冠動脈虚血に関していうと、インターベンションの分野ではワイヤーやシースといったベーシックな製品から薬剤溶出型ステントまで、外科においても人工肺、回路といったベーシックな製品から人工心肺装置やモニタリング装置などフルラインで取り揃えており、これらが弊社の心臓疾患領域の2大ビジネスとなっています。

加えて、心機能が徐々に失われていき、New York Heart Association(NYHA:心不全の重症度分類)のクラスでいうと3程度、後期の病態に属する患者さんに対して近年スタートさせたビジネスがハートシート事業です。

カテーテルと外科の領域の規模感はどれくらいですか。

鮫島 インターベンションの領域は心臓だけでなく下肢や脳血管領域にも対応しており、この事業領域の売上高は約2000億円です。外科の領域では前述した人工肺や人工心肺の他にも胸部や腹部の大動脈瘤治療に用いる人工血管やステントグラフトなども販売しており、これらを心臓血管カンパニーと呼んでいますが、全て合わせて約2600億円の事業を展開しています。テルモ全体の売上高は5142億円ですから、心臓血管カンパニーの規模はテルモの中で最も大きいといえます。