安全が期待される反面、厳しい基準が
ハートシート普及の課題に

御社は、2015年に世界初の心不全治療法の再生医療製品として、ヒト(自己)骨格筋由来細胞シートの製造販売承認を取得し、翌2016年に販売を開始されました。再生医療はこれまで有効な治療法がなかった疾患への治療が可能になるなど、期待は高まる一方ですが、このハートシートに対するお考えをお聞かせください。

鮫島 ハートシートによって症状が改善することももちろんですが、患者さんは心不全が重症化し、LVAD(左室補助人工心臓)治療を受けるか、あるいは移植を待たなければならない状況から遠ざかることができるようになりました。

我々の技術は自分の体内で採った細胞を培養して心臓に当てるため、リスクが少なく、安全かつ有効であることが期待されている製品です。ハートシートの持つポテンシャルをより多くの人たちに理解していただきたいと思っています。

ヒト(自己)骨格筋由来細胞シート

ハートシートについて、先生方の反応はいかがでしょうか。

鮫島 関心がある先生と懐疑的な先生、両者いらっしゃるというのが実感です。ただ、再生医療という技術そのものに関心を持たれている先生方が、一定の割合でいらっしゃることも事実です。

再生医療にはiPS細胞やES細胞など様々なアプローチがあり、その中で、どの細胞が本当に良いのか。また、我々は自己骨格筋幹細胞を培養してシート化する手法を用いていますが、それ以外のアプローチはあるのか。循環器領域の先生方とお話すると、一体どれが最後の決め手になるのか、まだわからないと考えている先生もいれば、そもそも本当に効果があるのかと思っている先生もいらっしゃるという印象を受けます。

ハートシートへの期待とは逆に、一般にあまり知られていないことも課題ではないかと思いますが、いかがですか。

鮫島 なぜ認知度が低いかというと、ハートシートの手術ができる病院が限られていることも1つの要因に挙げられます。施設基準には、例えばVAD(補助人工心臓)実施施設であることや医師の経験なども規定されているため、これをクリアできるのは大学病院もしくは大病院に限定されます。もちろん、大学病院は施設も整備され、優秀な先生が多数在籍していますが、条件をもう少し緩和すれば、より多くの医療機関に広げていくことができます。現在は条件及び期限付き承認なので、慎重に進める必要がありますが、手術ができる施設が少しずつ増えていけば一般への認知度も高まると思います。