治療へのこだわり、きめ細やかさ
日本の特殊性を活かした製品開発を

それぞれの事業領域の課題について、教えてください。

佐々木 課題については、2つの側面があると考えています。1つは企業側から見た課題、もう1つは患者さん側の課題です。

私たち企業の課題としては、地域ニーズへの回答に余地があることが挙げられます。日本の医療現場からの要望に対して十分に対応できているとは言い切れませんし、IVUS(Intravascular Ultrasound:血管内超音波検査)や前述したS-ICD(皮下植え込み型除細動器)などに関しては、日本が世界に先んじている分野として一歩踏み込んだ開発アプローチが必要であると考えています。また、軽度の心不全や予防に対しても更なるソリューション提供が必要です。

日本特有のニーズ、日本が世界に先んじている分野と言われましたが、世界の中で日本はどのように見られているのでしょうか。

佐々木 日本は世界に先駆けている分野がある一方で、特殊だと言われるところがあります。それは、治療に対するこだわりやきめ細やかな部分だと思いますが、私たちはそれらをニーズとしてきちんと認識すべきだと感じています。以前のように日米欧の最大公約数的なニーズを拾い製品を開発することが、徐々に時代に合わなくなってきています。その特殊性に対し私たちは、日本をベースとした製品の開発を通して応えていきたいと思っています。

もう少し具体的に伺いたいのですが、IVUSの例について教えてください。

佐々木 冠動脈に狭窄や閉塞が発生した際、血管を拡げる治療が行われますが、その前に、血管全体や血管の断面がどのような状態になっているのかを診断する機器がIVUSです。特に、経皮的冠動脈形成術(PCI)を行う前にIVUSが使用されることが多く、日本での浸透率は非常に高いです。一方、欧米では格段に低い状況が続いています。もちろん診療報酬の違いというバッググラウンドはあるものの、日本は世界の売上高において大きな割合を占めています。

また、前述した高速回転式経皮経管カテーテルも日本での使用率は群を抜いて高く、このような状況は、経皮的冠動脈形成術を行う際の違いやこだわりが現れているのではないかと考えています。

IVUSが日本で高い浸透率を誇っているのは、なぜでしょうか。

佐々木 3つの理由があります。1つは保険でカバーできるようになったこと。最近アジア諸国の中でも保険償還される国が出て来たとはいえ、海外ではまだまだ保険適用外の国も多く、また、患者さんの負担になるためなかなか利用されないというのが現状のようです。

次に、画像診断は日本の先生方が得意とする分野で、多くの情報を読み取り治療効果の向上に取り組まれています。経験豊富で優秀な機器のオペレーターやトレーナーが数多くいらっしゃいます。

3つ目の理由は、ステントに薬剤が塗布されたDES(薬剤溶出るテント)のようなデバイスを適用する際、安全かつ有効性を保っていくためには適切なサイズのステントをしっかりと血管に圧着することが重要です。その確認にIVUSの使用が非常に有効であったと考えています。

こういった違いは他の分野でも見受けられるのでしょうか。

佐々木 はい。先んじている分野は他にもあります。例えばS-ICD(皮下植え込み型除細動器)というテクノロジーは、日本の浸透率は世界一高いと言われています。日本には、新しい技術を純粋に受け止めるドクターが多数おり、その根底には治療成果の向上に大変意欲的で、メーカーとしても進めやすい環境があります。

御社の本拠地は米国にありますが、日本の市場をどのように見ていますか。

佐々木 日本には独自の背景と状況があることは十分に理解しています。前述したように、IVUSの使用度合いが抜きんでて高いこと、S-ICDの浸透率が世界一であることは当然把握しています。日本に対する期待は、経済的な貢献だけにとどまらず、グローバルにおける医療の発展と治療の成果向上に対する貢献を期待されていると思います。

第1回終わり(第2回に続く)