■トーク・セッション
座長:小室一成 氏 東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
パネリスト:斎藤能彦 氏 奈良県立医科大学第一内科学教室教授
      大屋祐輔 氏 琉球大学大学院循環器・腎臓・神経内科学教授
      筒井裕之 氏 九州大学大学院医学研究院循環器内科学教授

◯ 質問1
日常的に高齢者を診察していると、かなりの頻度で心雑音を聴聞致します。
全ての方を循環器専門医に紹介した方が良いのでしょうか(無症状の患者の場合です)。
(新潟 内科クリニック院長)

回答:小室氏

今回、先生方の講演の中で聴診について触れることはありませんでしたが、これは非常に重要です。私は学生に対して、「聴診器は心臓の音を聴くのが主で、それが聴こえなかったら飾りだ」と少し脅かしたりしていますが、実は心臓の聴診はそう簡単ではありません。肺やお腹の聴診に比べると、心臓の聴診は難しいと思います。

通常、聴診器を当てると「ダッダ、ダッダ」という2つ音が聴こえますが、これはI音、II音です。異常な心音としては、心不全を表すIII音が有名です。どのような音かというと、「ダッダダ、ダッダダ」、これが聴こえると九十何%、心不全といえます。患者さんもとても苦しい状態です。

それから、IV音という音があります。IV音はIII音の後で、「ダダッダ、ダダッダ、ダダッダ」。I音の前に聞こえるのでI音が2つに聞こえます。これはどちらかというと心臓が硬くなった拡張障害がある人です。ちょっと難しいですが、そのように聴こえると、心臓が拡大しているHFrEF(拡張不全)の人だと学生に教えています。

ご質問いただいた「心雑音」は、恐らく収縮期の雑音のことを言われていると思います。今日私がお話ししたように、年を取ると大動脈弁の狭窄症が非常に増加します。このAS(大動脈弁狭窄症)の音は非常に強いので、これは聞こえやすいと思います。収縮期の駆出性の雑音で、この音が聞こえるとASがあることがわかります。ただし、ASがあるからといってすぐ病院に紹介しなければいけないというわけではありません。ただ超音波の検査等は必要なので、1度は専門医に紹介していただいていいと思います。

より心不全に関係するのは僧帽弁閉鎖不全の音、汎収縮期閉鎖雑音です。特徴としては、II音が聴こえなくなってきます。雑音がずっと続くためII音が聴こえにくい。これが聴こえるとかなり心不全に関係が深いです。

それからHFrEFは、心臓の収縮が悪くなると心臓は拡大するので、レントゲンで心拡大が見えます。拡大すると僧坊弁が届かなくなる。いわゆるテザリングという現象が起こり、僧帽の閉鎖不全が生まれます。僧帽の閉鎖不全があるということは、心拡大があることを意味している場合が多いので、II音が聴こえず収縮期雑音が聴こえた場合、かなり心不全と疑った方が良いと思います。

では、心雑音が聴こえた場合、どうしたら良いのか。もちろんエコーを採ることは重要ですが、それ以上に重要なのは、今日、斎藤先生が話されたBNPを測ることです。

BNPを測ると、斎藤先生が言われたように、100pg/mLを超えていれば心臓に異常があります。症状がなくても異常があるので、専門医に紹介していただいた方がいいと思います。また、40 pg/mL以下であれば心臓に異常がある可能性が低いので、すぐに紹介する必要はありません。40 pg/mLと100 pg/mLの間はボーダーゾーンで注意し、検査をすることも考えてみてください。

回答:斎藤氏

BNPの値が100pg/mL以上あれば、やはりエコーを採って専門医に紹介していただいたらいいと思います。40pg/mL以下ならばシリアスなことはないでしょう。質問票には無症状と書いてあるので、そのときは何カ月経ってからもう1度測り、BMPの値が倍ぐらい上がってくるようであれば、やはり専門医に紹介してください。1度測ると忘れがちですが、半年後にもう1度測る、あるいは患者さんに「症状はどうですか」と聞くなど、注意深く診ることが大切です。

回答:小室氏

確かに患者さんの表情も大事です。私たち医師が「どうですか」と聞くと、高齢者は「いや、何でもないです」と答えますが、よく聞くと、階段を上るときに息切れしたりしています。それが年齢によるものなのか、心不全で症状があるのか。これを見分けることが重要です。高齢者が3階、4階まで歩けば息切れをしても普通だと思いがちですが、昨年まで何ともなかった人が、今年になって急に2階に上がるだけで息切れをするようであれば、心不全かもしれないので、症状の見極めも非常に大事です。

回答:大屋氏

私は高齢者の生活習慣病や老年病等にも携わってきましたが、高齢になると動かなくなる人がいます。ずっと座っている人であれば、そもそも症状が出ているかどうかがわかりません。ですから日常診療の中で、その人がどれくらい動き、どれくらい苦しい状態があるのか、あるいはないのか、常に聞いてあげることが大切です。

心不全の症状が心臓からくるものなのか、肺からなのか。それからフレイル(加齢と共に運動機能や認知機能が低下し、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態)になって筋肉量が落ち、歩くときに疲れてしまうのか。そこを見極めるためにも、総合的な判断は必要です。高齢者を診るときには、フレイルは頭に入れて診療されると良いと思います。

第1回終わり(第2回に続く)