■トーク・セッション
座長:小室一成 氏 東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
パネリスト:斎藤能彦 氏 奈良県立医科大学第一内科学教室教授
      大屋祐輔 氏 琉球大学大学院循環器・腎臓・神経内科学教授
      筒井裕之 氏 九州大学大学院医学研究院循環器内科学教授

OUKAS船橋 外観

◯ 質問1
Preserved EFの心不全診断の良いマーカーはないでしょうか。
このような拡張不全はBNPの上昇が悪いのでしょうか。(埼玉 内科クリニック院長・理事長)

BNPはHFpEFのマーカーにも
左室の拡張能が悪化し、BNP値を上げる

回答:斎藤氏

BNPは、HFpEF(拡張不全)でも上がります。それは恐らく左室の拡張能が悪くなっているので、拡張末期圧が上がり、BNPも上がってきます。ただし、入院された患者さんを診てみると、やはりHFrEFの患者さんの方が平均値は少し高いです。しかし、HFpEFでも十分上がってきますので、同様にBNPはマーカーになるとご理解いただいていいと思います。BNPを測り、同じようにカットオフは100 pg/mLでいいと思いますので、まずはそこからスタートしてください。

HFrEFになると1カ月で体重5kg増の場合も
高齢者は体重増加がなくても注意が必要

回答:小室氏

心不全の1つの特徴として、体重が増えることが挙げられます。これは、どちらかというとHFrEFになっているケースで、中には1カ月に5kg増えたという人がいます。ただ、80、90歳の人がそれほど太ることはないので、短期間に体重が増えたら水が溜まったことになり、心不全は怪しいと思います。

ただし、HFpEFは急にくるので、一般的には体重の増加がないといわれている人もいます。体重が増えていないから心不全ではないというのは、HFpEFの場合はあてはまりません。

なぜなら、HFpEFは心臓が硬い状態が長く続き、そこに過労や暴飲暴食、心房細動が加わると、要するに崖っぷちまで来ている人をポンと押すように、いきなり心不全になるので、体重が増えている間がないためです。

高齢者が旅行して帰ってきて、夜になっていきなり苦しくなったということがありますが、これがHFpEFの特徴です。体重増加がないからといって、心不全ではないのがHFpEFの特徴なので、十分に注意することが必要です。

診断が難しい駆出率が保たれたHFpEF
フレイルも疑いながらBNPの検査を

回答:筒井先生

HFrEFになると、特に心エコーを実施すればEF(駆出率:心室収縮機能の代表的な指標)が低下していることがわかるので、エコーを実施しないとなかなか評価は難しいですが、1つの指標で比較的簡単に診断ができます。

一方で、HFpEFは駆出率が保たれているため、心不全という診断が正しく行われないと、心不全ではない患者さんをHFpEFと診断してしまうリスクがあります。特に紛らわしいのが、COPDといった患者さんは症状です。

それから第1回で大屋先生が言われたように、高齢者の心不全が増えています。最近よくいわれるように、フレイルからくる倦怠感や労作時の息切れが強いケースがあるため、その場合は斎藤先生が紹介したBNP検査を行うことをおすすめします。

ガイドライン等では拡張機能を積極的に評価していくことが記されていますが、これも必ずしも確立された単一指標があるわけではないので、左房の容積や左室肥大、そういった左室の構造機能変化を加味して診断してください。

HFpEFは増えていて非常に重要ですが、世界中のガイドラインでも、この診断をどう正確につけていくのか、今後さらに取り組みが求められています。このような状況の中で、斎藤先生がお話になったBNPは、より簡便で、HFpEFの診断でも有用な指標であると、今年3月に改訂されたガイドラインでも位置付けられています。

症状だけでなく、それ以外のことを
総合的に考え診断することが不可欠

回答:小室先生

HFpEFの診断は難しいですね。聴診すると肺に雑音が聞こえ、レントゲンを撮ったら肺水腫で心臓は大きくなっている。エコーを撮ったら動いていない。だからHFpEF、心不全だと思ってもう1度エコーを撮ると、心臓が結構動いている。「これは一体何だろう」というのがHFpEFです。

そのときは先生方が言われたように臨床診断が重要です。症状だけでなく、それ以外のことを総合的に考えて診断しなければなりません。ただ、BNPは上がっていることが多いので、BNPを活用することが良いと思います。

第2回終わり(第3回に続く)