質疑応答1
心臓の病気によって心不全は起こるのか

心筋梗塞や弁膜症など、心臓の病気によって心不全は起こるのか。

小室氏 主に息が苦しいといった症状がないと、心不全とはいえない。そして、その大前提として心臓が悪いことが挙げられる。心臓には予備力があり、心臓の駆出率(心拍ごとに心臓が送り出す血液量)は通常60%あるが、それが10%の人でも症状がない人は多数いる。心臓が大きくなることによって、あまり収縮しなくても、拍出量(心臓によって単位時間あたり送り出される血液量)は落ちないため症状が出ない。つまり「心臓が悪い=心不全」ではない。心臓が悪い人は多数いるが、症状がなく普通に生活できる人もいる。第1回でも述べたように、息が苦しい、疲れやすい、むくみなどの症状が出て初めて心不全と呼ぶ。

高血圧や弁膜症、心筋梗塞を発症したために心臓が悪い人もいるが、かといって全ての人に症状があるのではなく、むしろ症状がある人の方が少ない。ここの理解が難しいため、私たちが説明しても、「心筋梗塞と心不全とどう違うのか」「亡くなる時は心臓が止まるからみんな心不全だろう」という質問を受けることが多く、なかなか互いに理解ができにくい。

シンプルな考え方は、何らかの原因で心臓が悪く、その結果、前述したような心不全の症状が出る。その症状が1度出ると、良くなったとしてもまたすぐ症状が出て、しかも段々悪くなり最後は命を落とす。これが心不全である。

質疑応答2
心不全患者のデータベース構築事業について

2013年から5年間を振り返る研究と、2013年から2年間を観察する研究という理解で良いか。

筒井氏 1つは、現時点から2013年の1年間に入院した心不全患者を後ろ向きに登録すれば、2018年1月の段階で最長5年間の観察をすることになり、後ろ向きで経過観察するスタイルで患者のデータベースを構築する。さらに、その患者を前向きに今後2年間、どのような経過をたどるかを収集することにより、前向きにもデータを構築していく。

質疑応答3
心不全啓発を具体的に活動について

心不全の啓発活動は、具体的にどのように進めるのか。

小室氏 心不全には様々な段階がある。病院に来た人にはこれまでもパンフレットを配布するなどしており、これは継続していくが、最も重要なのは0次予防だ。心不全を発症した人は当然心臓が悪いが、残念ながら今は根本的な治療法がなく、時間の経過と共に悪化していく。ここに膨大な医療費がかけられているものの、これを止めることができない。やはり最も有効なのは心臓が悪くならないことだ。そのために生活習慣の改善が重要になってくる。

啓発の方法としては、生活習慣が悪いと心臓が悪くなり、心不全になったら食い止めることはできないため、生活習慣を改善することを伝えていく。生活習慣を改善することで、心不全を発症させないことに繋がる。ただ、それだけ伝えるのではなく、0次予防、1次予防、2次予防とあるので、心不全を発症してしまった人にもできるだけ家で苦しくならずに生活できるよう、再発予防にも努めてもらう。

筒井氏 日本心不全学会では心不全患者を対象とした啓発活動を行っていると述べた。具体的には、全国で年4回、市民公開講座を開催し、心不全とは何か、診断や治療などについて一般向けに指導をしている。加えて、心不全は日常のセルフケアが大事であることから、日本心不全学会は心不全手帳を発行。自宅での自己管理をサポートすることを目的に、体重や脈拍、血圧、症状などを患者自身が記録し、心不全の治療などについても触れている。この心不全手帳は、学会に参加する医師や看護師など、医療従事者に無料で配布しているほか、日本心不全学会のホームページから手帳をPDFでダウンロードできるようになっている。

心不全手帳