質疑応答4
患者数と死亡者数について

日本の心不全の患者数がわからないにもかかわらず、なぜ半数が亡くなっているといえるのか。

小室氏 日本の心不全患者数がわからないと言ったのは、悉皆性のある日本全国のレジストリはないためで、各地域、各大学においてそれぞれ様々な臨床研究を行っている。その地域によって大枠の予後については推定できるが、それが日本全体かというと、第1回の佐渡島のデータで日本全体を推計したように、それをもって日本全体とはいえない。ただし、地域ごとの予後はほぼわかるが、地域によって大学病院、診療所によっても異なるので、日本全体を俯瞰できるデータはない。

加えて、記者から「心不全は、一般には単に心臓の病気と思われている現状があると思うが、そこをどう考えるか」という問いに対して、小室氏は次のように答えた。

1つは学会が啓発活動を行ってこなかったこと。それから、我々医療者にとっては、心不全とは何か、暗黙のうちに理解できていた。ところが一般の人に対して、心不全をわかりやすく説明することが非常に難しく、その説明をあまりやってこなかったこともある。

しかし、心筋梗塞よりも心不全で亡くなる人が増加し、高齢化と共に世界中で心不全患者が爆発的に増えていることから、ここ10年で心不全の重要性が増していることは世界的にもトピックになっている。このことからも、広く一般に心不全の啓発活動を進めていきたいと考えている。

斎藤氏 具体的な啓発活動について少し補足したい。『脳卒中と循環器病克服5カ年計画』の中で、「予防:心不全の啓発」というサブグループを設け、佐賀大学医学部内科学講座主任教授の野出孝一氏を委員長に様々なことを計画している。

例えば、一般の人にわかりやすく伝わるようなキャッチコピーやイメージキャラクターを用い、啓発活動に取り組んでいく。その他、様々な機関やグループとも連携して活動を広げていく。その1つが、「これからの心臓病医療を考える会(日経BP社)」を母体とする「心不全啓発キャンペーン」で、日本循環器学会と共同で展開する。

また、本日参加していただいた数多くのメディアの方々には、我々の取り組みを理解してもらい、啓発活動を計画してもらえば、日本循環器学会、日本心不全学会はいつでも協力をさせていただくので、よろしくお願いしたい。

質疑応答5
1万人抽出の施設数と活用時期について

2013年度の患者1万人は全国のどのくらいの施設でやるのか。また、実際に活用するのはいつ頃を想定しているのか。

筒井氏 日本循環器学会には専門医の研修施設および関連施設があり、対象になるのは約1000施設になる予定で、施設をランダムに抽出し、そこから患者もランダムに抽出するため、全施設が対象ではなく、恐らく200施設の中から1万人を抽出すると想定している。

2013年から最長5年間、患者の経過を観察するが、その患者をさらに前向きに観察する場合は全ての患者ではなく、さらにランダムにサンプリングした人を新たな情報を付け加えてデータベースを構築していく。

作成作業は今年11月から取りかかり、各施設の倫理委員会の承認等の作業が必要になるため、データベース構築には2018年3月までかかる予定だ。ベースラインのデータについては来年度早々には何らかの形で公表したいと考えている。

斎藤氏 少し追加したい。日本循環器学会で把握している研修施設は、全体のベッドの70%を占めているので、それくらいの規模感の分母とお考えいただきたい。

質疑応答6
「生命」と「寿命」について

心不全の定義の中で、「生命を縮める」といっているが、一般にはそのような使い方はしない。ここは「寿命を縮める」と言い換えてもいいか。

斎藤氏 心不全の定義を作成するにあたり、事前にメディアの方々の言葉の使い方を聞いて、「生命」とした。確かに寿命というのも1つの案としてあったが、記事にする際に寿命と言い換えたいということか。

そうだ。

小室氏 最後は命を落とすが、言葉として難しかったため、命を残して「生命を縮める」とした。意味としては同じだと思うので、言い換えても良いと思う。