質疑応答7
心臓リハビリについて

心不全を発症すると治らないといわれたが、症状を緩和することは可能だろう。例えば、心臓リハビリといった方法があると思うが、そうした説明がなかった。治らないと聞くと患者は絶望的な気持ちになるのではないか。

小室氏 我々も、もちろん心臓リハビリも重要だと思っている。悪くなった人をさらに悪くしないためにも、例えば心筋梗塞になった人でも心臓リハビリをすれば苦しくなることが少なくなるので非常に重要だが、細かくなるので今日の説明の中に入れなかった。運動をすることで心臓の障害や悪化も防ぐため、今後、詳しく説明する際には心臓リハビリについても紹介したい。

質疑応答7
誰がデータベースを活用するのか

データベースは医療者向けなのか。それとも一般の人も閲覧可能なのか。

筒井氏 医学・医療の研修や実際の診療をしている医師が現場で使えるよう、その結果を戻していくが、AMEDの研究資金を使って行う研究のため、内容については一般に広く公表していくが、データベースについては一般の人が使うものとは考えていない。

 

質疑応答8
高齢者が増えるから心不全も増えるのか

例えば、死亡記事などで、がん患者が全身状態が悪くなり、最終的に心不全で亡くなったと書かれていることが多い。高齢者の死因として心不全で亡くなるというイメージがあり、当然、高齢者が増えれば心不全も増加すると考えているが、それは違うのか。

小室氏 一部はそうしたものもあるかと思う。本来、がん患者が亡くなる時には、がんで亡くなったとすべきだが、死亡診断書を書く医師に任されているため、心不全になったと書かれていることもあるかもしれない。ただし、最近は変わってきていて、がんサバイバー(がんを克服した人だけでなく、がんと診断された人や再発した人なども含む、がん体験者のことを指す)と言われるように、がんを治療することによって、これまでは1年もたなかった人が5年生存することがある。

その人がどうなるかというと、がんから心不全になることが多い。というのも、多くの抗がん剤は心臓に強い障害を与える。何十年も前からアドリアマイシン心筋症が知られているが、それ以外の抗がん剤も心臓に悪い影響がある。がんが良くなっても、急に苦しくなって水がたまり亡くなるのは、心不全になったからだ。イニシャルはがん、治療をしているうちに心不全で亡くなるということは、今後ますます増えていくだろう。

これまで、がんと循環器は離れていたが、腫瘍循環器という分野が注目されており、世界中でがんサバイバーが増えている中で、がんは克服しても心臓の病気で亡くなるケースが増加している。がんは血の塊が飛んで血栓塞栓症になることが多いが、それを抗がん剤がさらに促進するため、肺や脳に血の塊が飛び、肺血栓塞栓症や脳卒中になる人が増えている。

昔は診断が緩く、心不全とつけてしまったこともあるだろうが、最近は正確になってきている。心不全の死亡統計を見ると、ガクンと下がった時期があるが、これは診断が正確になったからだ。今後、がんで亡くなる人と、がんから心不全にかかって亡くなる人を正確に分けることが難しくなっていくと思われる。

高齢者の2人に1人は、がんにかかるといわれているが、例えば前立腺がんで命を落とす人は実は一部で、治療を受けているうちに心不全で亡くなっている。やはり悪い生活習慣によって心不全になっていく人が多いため、生活習慣を改善する、予防をしてもらうことが、今回の我々の最大のメッセージだ。

質疑応答9
「病態」か「病気」か

Q&Aの1に「医学の専門用語としては病気ではない」とあるが、その意味がよくわからない。

筒井氏 我々のガイドラインや教科書等でよく使われているのは「臨床症候群」。息切れやむくみや倦怠感といった症状が出てきた「病態」だ。これは医学的には正しい表現だが、心不全を定義したときに、一般の人には臨床症候群や病態では「病気ではない」と受け取られかねず、むしろわかりにくくなる。そこで、最もわかりやすい言葉として、「病気」と表現した。

斎藤氏 例えば、「今日はあの人、なぜ会社を休んでいるのか」と聞いたとき、「病気です」と答える、その「病気」というニュアンスだ。風邪も、正式には「風邪症候群」というのが医学的な名前だ。風邪の原因となるウィルスは様々あり、症状は咳が出る、鼻水が出るなどの症候群である。一般的に風邪は原因や症状が受け入れられているが、心不全はまだ受け入れられないため、わかりにくくなっていると思う。

第3回終わり(連載3回)