心不全における
予防の重要性を訴求

昨年10月31日、日本循環器学会と日本心不全学会は、心不全の一般向けの新たな定義を発表した。すなわち「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」というもの。今回のガイドラインでは一般向けとは異なり「何らかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」と定義された。

心不全患者は現在100万を超えると推計され、今後も増え続けると予想されている。有効な根治療法がないため5年生存率は50%であり、一度発症すると不可逆的に進行する。従って心不全患者を増やさないためには、生活習慣の改善を通じた予防が何より重要だ。心不全における予防の重要性を明示するため、新たに作成されたのが「心不全とそのリスクの進展ステージ」図である。

急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)P12より

縦軸に「心不全とそのリスク」「心不全の進展イベント」「心不全ステージ分類」「身体機能」「治療目標」の各項目が並び、それぞれがどのように進展していくかがひと目で分かるように示されている。ポイントはステージ分類が明示されたこと。心不全がステージAからB、Cと経てDへと不可逆的に身体機能が低下する様子が視覚的に理解できるよう示されている。

各ステージの定義については、リスク因子をもつが器質的な心疾患がなく、心不全症候のない患者をステージA、器質的心疾患を有するが、心不全症候のない患者をステージB、器質的心疾患を有し、心不全症候を有する患者を既往も含めてステージCとなる。さらにおおよそ年間2回以上の心不全入院を繰り返し、有効性が確立しているすべての薬物治療・非薬物治療について治療ないしは治療が考慮されたにもかかわらずニューヨーク心臓協会(New York Heart Association:NYHA)心機能分類III度より改善しない患者はステージDと定義される。

この段階別表示に込められたメッセージについて「ステージを明示し、各ステージにおける予防の重要性をアピールする。心不全未発症段階のステージA・Bをあえて入れることで進行性であることと予防の可能性を強調した。またステージCになると治療により症状が軽くなり無症状になる場合もあるものの、ステージBには戻らない点も訴求した」と筒井氏は説明する。心不全が進行性であることと予防が可能であることは、2001年の米ACC/AHAのガイドラインに示された考え方である。「心不全の予防可能性については議論もあったが、予防の重要性は高まっており、今回のガイドラインに取り入れることにした」(筒井氏)。

治療に関しても予防的なアプローチの重要性が示されており、ステージAにおける高血圧や糖尿病などのリスクファクターの管理、ステージBにおける器質的心疾患の進展予防による心不全の発症予防などが強調されている。