※ 上の写真はDreamforceでの「Einstein Voice」の発表の様子(出所:Salesforce.comのブログ)

サンフランシスコにそびえ立つSalesforceタワー(出所:Salesforce.com)

 Salesforce.comは営業支援、CRM(顧客関係管理)などのアプリケーションをクラウドで提供するSaaS(Software as a Service)ベンダーだ。2017年の売上高は100億ドルの大台に到達。その成長ぶりを象徴するように、サンフランシスコ市内に全長326メートル・61階建のSalesforceタワーを建てた。BtoBソフトウエア分野を独占してきたのはOracle、SAP、Microsoftなどオンプレミス生まれのベンダーたち。世代交代を予感させるが、違うのはクラウドという配信モデルだけではない。同社のイベント「Dreamforce」から、新しいBtoBベンダーSalesforceの秘密に迫る。

企業カルチャーは競争ではなく家族

 Salesforce.comは1999年、まだクラウドという言葉が使われるようになる前に、”Amazonで本を買うように業務アプリケーションをシンプルに購入して使えないか”と考えたMarc Benioff氏が共同創業した。


 Dreamforceは同社が毎年秋に開催する自社イベントである。IT業界の自社イベントとしては世界最大級。2018年も17万人がサンフランシスコの中心にある会場(モスコーニセンター)に集った。この中には日本からの800人も含まれている。


 Salesforceは家族を意味する“Ohana”をSalesforceの企業カルチャーとしている。社員、顧客、パートナーなど自社に関わる人は家族として大事にするというメッセージで、Benioff氏はDreamforceを「家族の集まり」だとする。初日午後の基調講演は必ずハワイのセレモニーでスタートし、その後ステージに立ったときにBenioff氏は最初に「ありがとう」と感謝を伝える。


 Dreamforceが他のITベンダーのイベントと異なる点は、このオープニングのセレモニーだけではない。会場のあちこちのステージに登場する多彩なゲストも特色だ。今年は元米国副大統領のAl Gore氏が環境問題について話をした。政治関連のセレブでは、2017年に元大統領夫人のMichel Obama氏もDreamforceのステージを踏んだ。ミュージシャンも数知れない。Stevie Wonder氏がオープニングにピアノを弾いたこともあれば、X-JapanのYoshiki氏が基調講演の合間にピアノで米国国歌を弾いたこともある。教育問題でBenioff氏に共感しているラッパーwill.i.am氏はDreamforceの常連だ。教育では、亡きSteve Jobs氏の夫人、Laurene Powell Jobs氏も2017年に登壇した。ハリウッドのセレブもいる。過去にJessica Alba氏は自身のビジネスについて、Natalie Portman氏は平等について語った。


 このような多彩なゲストを招いて社会問題を語ってもらうことは、技術について話すことと並んでDreamforceの重要なフォーカスだ。Benioff氏は大手企業としては初めて平等性(イコーリティ)を担当する最高イコーリティ責任者を任命、LGBTQに企業として取り組む姿勢を示した。これらの背景には、「ビジネス活動は社会を変えるためのプラットフォームになる」というBenioff氏の考えがある。Benioff氏は前職Oracleでの経験を生かし、創業時から「1-1-1(従業員の1%の時間、1%の株式、1%の製品を非営利団体や教育機関に無償提供する)」として慈善活動を企業活動に組み込んだ。このモデルは、Google、Boxなど多くのシリコンバレー企業が採用している。


 ゲストに加えて、ここ数年同社がスローガンとする”TrailBlazer”(”開拓者”を意味する)とともに展開するキャラクターを用いたマーケティングも、Dreamforceの大きな特徴になっている。会場はピクニックや山登りに来たかのような雰囲気を演出している。Salesforceによると、誰にでも入れる国立公園をイメージしているのだという。


 こうしたことから、Dreamforceは最新の技術紹介というより、Salesforceの文化を知ってもらうことを重視したイベントに見える。

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