「こだわりのパン屋を開業したい。だが、店の場所代や、キッチンなどの設備を整えるのが大変だし、会計処理の知識もない」「既にレストランを持っていて、別の地域にも展開したいが、その地域で今のメニューが受けるのか、価格付けをどうするか、どう宣伝広告を打てばよいかが見通しがつきにくい」――。近い将来、このようなフードビジネスにありがちな課題が解決されるかもしれない。


 料理を作るための共用の場所や設備を提供し、その施設を複数拠点用意して簡単に全国展開できるようにする、という新たなビジネスモデルが注目を集めている。ビジネスオーナーはお店自体は持たず、料理を作る場所をシェア型で持ち、エンドユーザーの家庭やオフィスに配達するというものだ。このようなモデルを総じて、「レストラン・インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス」「オンデマンド・レストラン」「バーチャル・レストラン」「分散型キッチン」などと呼ばれている。いわばフード版シェアード・エコノミーで、配車サービスのUber Technologiesと同様、フードビジネスを展開しようとする利用者が各自で資産を所有するのではなく、台所、冷蔵庫、出前配達機能などを利用者の間で共有する。


 AIの時代を反映し、これらのビジネスモデルを提供するベンチャー企業は店舗などのハードやインフラに加えて、各地域ごとの嗜好や価格付けなどのデータを収集・分析し、レコメンデーションしてくれる。フードを提供する利用者としては、レストランの場所代やキッチン設備などの莫大な初期投資が必要なくなり、リスクを小さくできる。また、同じ設備をシェアする利用者の間でコミュニティーが形成され、そこで様々な情報やノウハウの交換が行われる可能性もある。


 米グーグルもこの分野に着目している。同社傘下のコーポレートベンチャーキャピタルであるGVは2018年10月、新鋭ベンチャーである米Kitchen Unitedに投資した。この動きは米ホールフーズ(Whole Foods Market)を買収してバーチャルとリアルの融合を積極的に進める米アマゾンをにらんだ対抗策の一つ、という見方もできる。


 カリフォルニア州パサデナに拠点をおくKitchen Unitedは、食品衛生局のライセンスを取得した商用キッチン・スペースを提供している。ここは24時間365日利用可能となっている。


Kitchen Unitedの紹介動画

 ここでは利用者ごとにカスタマイズ可能な最新の料理ステーション、十分な容量を備えた乾燥/冷蔵/冷凍ストレージ、皿の洗浄機、クリーニング、水・電気・ゴミ捨てといったインフラが利用できる。また、害虫駆除や監視ビデオブランディングやマーケティングやソーシャルメディアなどを活用したプロモーション支援、BI(ビジネスインテリジェンス)を活用したデータ分析、料理の配達チャネルのセットアップ、会計処理、WiFiやプリンター、コンシューマー向けのイベント企画など様々なサービスを提供する。このため、利用者は料理を作ることに専念すればよい。さらにバーチャル・レストランの開業を志す起業家を対象に起業トレーニングおよびカウンセリングも提供している。


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