フリービットとアルプスアルパインは、ブロックチェーン技術を応用してスマートフォンを自動車の鍵として使う「デジタルキー」の基礎技術を共同開発した。自動車のオーナー情報や権限をブロックチェーンで管理(「スマートコントラクト」を使用)することで、理論上「完全なセキュリティ」を担保しながら、低コストで運用できるという。併せて、デジタルキーの仕様策定や標準化を進めるCCC(Car Connectivity Consortium)のホワイトペーパー「Digital Key 1.0」にも準拠しており、対応する製品とのスムーズな連携を実現する。


 「Car Key Platform」と呼ぶこのシステムは、ブロックチェーンの一つである「Ethereum(mainnet)」に接続し、自動車の鍵の新規発行やオーナーの変更、家族など複数ユーザーでの鍵のシェアができる。鍵のシェア機能では、使用期間を設定することもできる。例えば、自宅にある車を使いたいのに家族が鍵を持って出かけてしまったという場合、デジタルキーをダウンロードすれば解決する。友人に明日の午後だけ車を貸したいという場合も、わざわざ会って鍵を貸し借りする必要はない。


「Car Key Platform」の紹介スライド(画像:アルプスアルパイン)

 自動車メーカーとしては、デジタルキーの便利さを付加価値として新車販売の拡大につなげたいところ。ただ、自動車の"寿命"は長い。自動車の初期購入者だけでなく、その自動車が中古市場に2次・3次流通した先まで数十年にわたって管理・サポートし続ける必要がある。その間、自動車の修理や、家族・友人間での貸し借り、業務での利用など、鍵を貸し借りする場面は多く、デジタルキーをダウンロードするスマートフォンの機種もバラバラだ。鍵を管理するサーバーがなくなればその自動車は使えなくなる。高いセキュリティを確保したまま、いつまで、誰が鍵の管理をするのかという問題は、自動車メーカーを悩ます。同時に、これらは購入する側にとっても重要なポイントであり、所有車にデジタルキーの普及が進まない一因になっているという。


 サーバーによる中央管理型のシステムでデジタルキーの管理を行う場合、サイバー攻撃への対策や、システムの安定運用など、万全のセキュリティーが求められる。当然、対応車の販売台数が増えれば必要なコストも膨らむため、長期間のサポートを提供するためにはシステムの運用コストをいかに抑えられるかが重要になる。そこで両社は、高いセキュリティーレベルと低コスト運用を両立する方法としてブロックチェーンが最適と判断。自動車メーカーが一元管理するよりも、分散型のブロックチェーンで自律的に管理されていくようなプラットフォームを構築できれば負担軽減が可能となり、課題解決につながると考えた。


 2019年1月に米国ラスベガスで開催された「CES 2019」では、アルプスアルパインがCar Key Platformのデモンストレーションとして、本番ネットワークにつなげた「ドアロックハードウエア」(自動車の扉を模したもの)を展示し、スマートフォンで鍵を開閉する様子を紹介した。大手自動車メーカーやカーシェアリングサービス事業者らの注目を集めたという。


CES 2019ではスマートフォンの操作でドアの鍵が開閉する様子をデモンストレーションした(画像:アルプスアルパイン)

 カーシェアリングサービスでは、スマートフォンのBluetoothやNFCを使ったデジタルキーが導入されているところもある。ただし現在のサービスは、ドアの開閉のみをスマートフォンで行い、エンジンの操作は車内に置いてある物理キーを共用して運用していることが多い。このため、治安の悪い地域では窓を割って車内に侵入される盗難被害が増えており、車両の保険加入を断られるケースもある。今回のシステムを導入すれば物理キーを共用する必要がなくなるため、特に海外のカーシェアリング事業者から「早く導入したい」という声が多かったという。


 デジタルキーの応用についても構想は広がる。将来的にデジタルキーの機能を拡張すれば、利用者(運転手)ごとに自動車の速度制限を設けたり、運転可能なエリアを限定したり、シート位置など車内の環境を自動調整したりといったことが技術的には実現できるという。安全性の評価や法律面での課題はあるものの、単に「便利」な使い方だけでなく、高齢者ドライバーの事故低減といった社会課題の解決につながる可能性を秘めている。


 今後、両社は「Car Share Platform」や、オフチェーンにおける漏洩・改ざんリスクに対応する技術を進め、数年後の実用化を目指す。フリービットは不動産仲介やマンション向けインターネット事業などを手がけるグループ企業を通じて、不動産物件の内見にデジタルキーを活用するといった「家」を対象としたデジタルキーソリューションなど、他方面への応用も併せて検討していくという。


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