ファッション業界に人口知能(AI)の波が急速に押し寄せてきている。


 ファッション市場では、2020年を境にインバウンド需要が落ち込むと見込まれていて、それを挽回するための策としてオンラインショッピングサイトが重視されている。ただ、オンラインショッピングは消費者にとって、いつでも購入できるという便利な面がある一方で、まだまだ不便なところもある。それを解決し売り上げ増に結びつける“処方箋”として、AIに注目が集まっているのだ。


 ファッションに特化したAIの特徴はどういったものなのか? そして、ファッション市場はどのように変化していくのか? いち早くファッション領域のAIの可能性に目をつけ、開発に取り組んでいるニューロープ社長の酒井 聡氏に聞いた。

スナップ写真に人力でタグ付けして蓄えたデータからAIを開発

ファッション業界にAIを持ち込んだ経緯を教えてください。


酒井:元々は、2014年から「#CBK(カブキ)」というファッションメディアの運営に携わっていました。そのメディアで、300人程度のモデルとインスタグラマーと提携して、読者向けに、彼女たちのスナップ写真を見られるサービスを提供していました。またショッピングサイトとも提携して、読者が気に入ったスナップ写真のファッションに類似したアイテムを買えるようにもしていました。


 この仕組みを実現するためにやったのが、スナップ画像にアイテムタグを記入し、類似アイテムとひも付けることでした。作業は人手でしたが、これを続けることで、スナップ画像を細かく分類するデータが大量にたまりました。そこで、このデータを基にしてAIを開発することにしたんです。開発したのは、コーディネートのスナップ画像に含まれているアイテムを解析するAIと、コーディネートを提案するAIの2つです。15年秋に開発を始めたのですが、時間がかかって、18年に入ってやっと事業化できました。


なぜ開発に時間がかかったのでしょうか。


酒井:アイテム数がとても多いことが理由です。例えば顔認識を例に挙げると、目、鼻、口などある程度要素が決まっているし、バラエティも少ないのでまだ認識しやすい。しかしコーディネートを認識するとなると、画像の中に、トップス、ボトムス、インナー、小物など複数アイテムが登場してきます。さらに一つのアイテムのなかで、色、柄、シルエットなどバラエティに富んでいる。処理すべきタスクの難易度が非常に高くなってしまうのです。


 ただ、開発に成功して事業化してからは、多くのファッション関連企業からオファーをいただいて、法人向けにAIを提供できています。


AIの導入例を教えてください。


酒井:ショピングサイトでの稼働が増えていて、類似アイテムをリコメンドするサービスを提供しています。今までもリコメンド機能はありましたが、既存の機能だとボトムスに対してはボトムスしかひも付けされません。我々のAIを導入すると、そのボトムスを自動で解析し、トップスやパンプスにも類似アイテムを出すことができます。AIが「#CBK」の膨大なデータに基づいて、「このボトムスには、このアウターやトップスが合いますよ」という提案をしてくれるわけです。従来のリコメンド機能とは質が異なっていて、さらなる売り上げ増に結びつきます。また、ショッピングサイトにユーザーがスナップをアップすると、AIが写真を解析し、類似アイテムを表示するサービスも提供しています。

ここから先は、DIGITALIST会員(登録無料)のみが閲覧することができます。

次ページ

トレンド分析とサプライチェーン最適化で在庫を圧縮

会員の方は、ログインしてください。
会員でない方は、会員登録(無料)をお願いします。