アイデアは2014年、Amazon Goに先を越され悔しい思い

“チェックアウト・フリー”というアイデアは、いつ思いついたのでしょうか。


 思いついたのは、2014年、前職でケープタウンからサンフランシスコに戻ってきた頃。平日の夕方、子供のミルクが欲しくて、帰りがけに食料品店(グローサリーストア)で買い物をしようとしたときのことです。


 レジ前には人の列ができていて、たった一つ、オーガニックのミルクを買いたいだけなのに、どう見ても5分は待たされる状況でした。わずかなことですが、これは結構なストレス。結局、そのときは、すぐにオーガニックは諦めて店を出て、コンビニエンスストアで買って帰りました。


 その時に考えたのは、そこに大きなムダが生じているということです。調べてみると、米国では食料品店のレジはだいたい4〜8分ほど待つのが普通らしく、累計では1年で370億時間を列に並んでムダに過ごしていることがわかりました。


 このムダをなくし、消費者や店舗のストレスをなくしたい。だったらレジ待ちをなくせばいい。それから、具体的にどうすれば実現できるか、チェックアウト・フリーの仕組みについて考え始めました。


最初から、今のチェックアウト・フリーをイメージしたのでしょうか。


 いいえ。今のビジネスを始める前、私は15年ほど、Eコマースのビジネスを手がけていました。ですから、まず最初に考えたのは、グローサリーストアに行かずに済ませることでした。


 それで考えたのが冷蔵庫の中にカメラを置くことです。そうすることで、突然何かの食材が足りないことに気づいて買い物に行くといったシーンをなくせると考えたからです。ただ、これはコスト的な問題などからビジネスとしてはうまくいきそうもありませんでした。それよりは、店舗そのものを変えるほうがビジネスチャンスとしては大きいと判断して、チェックアウト・フリーをイメージするようになりました。


 リアル店舗について考えると、店舗設計、販売管理・分析など、いろいろな仕組みが必要になります。それらを合わせて提供することで、小売店のニーズに応えられます。問題は、それらを実現するためのハードウエアのコストです。店舗にとってはこの支出が高いハードルになります。裏を返せば、そのハードウエアの支出を抑えられるソリューションなら、マーケットに合うわけです。そこにビジネスチャンスがあると考えました。


それで、チェックアウト・フリーを実現すれば、消費者のストレスも減らせると。


 そうです。店舗からすると、レジ待ちを嫌う消費者の機会損失を減らすと同時に、店舗運営を効率化する仕組みを低コストで手に入れられます。


 消費者のストレスをなくすことを考えるなら、例えば店舗のレジの数を増やして決済の処理能力を高める手もあります。ただ、これは店舗にとっては大きな負担です。商品を置くスペースは同じでも、レジ待ちをなくすためだけに広いスペースを確保しなければなりません。しかも、それぞれのレジには人を割り当てなければならず、そのための人件費もかかります。チェックアウト・フリーにすれば、そういった小売店の悩みは激減します。


アマゾン・ドットコムが2016年に「Amazon Go」として、やはりレジ無しの店舗を公開しましたね。今では10店舗ほどに増えていますが。


 そうですね。私たちがチェックアウト・フリーの開発を始めたのは2014年ですから、当時はAmazon Goについては知りませんでした。ですから、2016年に彼らが公開したAmazon Goのビデオを見たときには、正直、先を越されたことにがっかりしました。ただ、その一方で、大手が乗り出してきていることで、確かにそこに市場があるのだという感触を得られ、興奮もしました。


アマゾンだけでなく、Standard Cognitionなどの競合も出てきています。


 確かに、競合はいます。ただ、私たちは彼らとはいくつかの点でアプローチが違います。まず、私たちはアマゾンとは違って、店舗運営には興味はありません。あくまでもソリューションを提供する立場です。


ソリューション提供という点では、Standard Cognitionなどは似た立場かと思います。


 そうです。そこはシステムの仕組みの違いがあります。カメラ映像だけで実現しようとすると、商品を棚から取ったのか、いったん手にした商品を棚に戻したのか、判別できない場合があります。商品棚に仕込んだ重量センサーを使うことで、商品そのものがどう動いたかがわかります。


 私たちは、そういったセンサーフュージョンを生かした仕組みを提供していくつもりです。今はカメラと重量センサーの組み合わせですが、将来的には、目的やシーンに合わせて別のセンサーを組み合わせたソリューションにしていくこともあり得ます。




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