一次産業などを中心に既に顕在化している国内の労働力不足。それでも今は、まだ序の口だ。みずほ総合研究所の調査によると、2065年の国内の労働力人口は2016年比で約40%、実際の労働人口でいうと約2500万人も減少する。


 その対策として昨今動きが盛んになっているのが外国人労働者の受け入れである。2019年4月1日、海外人材の受け入れを拡大する新制度がスタートした。政府は、人手不足が深刻とされる介護や建設、外食、宿泊、農業など14業種で、「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」と認められる「特定技能1号」の新在留資格を新設。新たな在留資格のもと、2019年度1年間で最大「4万7000人余り」を受け入れる。その規模は、今後5年間で最大「34万5000人余り」にも達するという。5月21日には外食業での技能試験の結果が発表され、受験者460人中347人が合格した。


 一方で、RPA(Robotics Process Automation)をはじめとするデジタルレイバーも注目度が高い。この1〜2年でRPAは認知度が高まり、導入例もぐんと増えた。今後、RPAの動作シナリオを手軽に作れる機能や、複数のRPAを連携させる機能などが充実していけば、より広範囲に浸透していくだろう。


 とはいえ、当然のことながら、不足していくのは現場で作業する人員だけではない。それを束ねて組織として動かす管理職も足りない。中小企業は、後継者不足にも悩まされている。

横浜市内の約半数の企業が後継者不足に悩む

 その状況を端的に示す例がある。国内最大級のハイクラス人材の転職支援サービスを展開するビズリーチは、横浜市と協業して、横浜市内の企業の事業継承問題の解消に乗り出した。横浜市のほか、公益財団法人横浜企業経営支援財団(以下、IDEC横浜)と、横浜市における中小企業の事業承継ニーズの顕在化を目的とした協定を締結。横浜市を営業基盤とする横浜銀行、横浜信用金庫、神奈川銀行、川崎信用金庫の協力を得て、事業承継支援に取り組む。


 具体的には、事業承継M&Aプラットフォーム(Webサイト)「ビズリーチ・サクシード」を提供し、そこに開設した横浜市特集ページを市内の中堅・中小企業に積極的に使ってもらう。その他にも、ビズリーチが運営する求人検索エンジン「スタンバイ」などを通じて、横浜市内の中堅・中小企業が後継者や幹部人材を採用できるように支援する。


 この取り組みを始めた背景には、横浜市が直面する深刻な問題がある。横浜市によると、市内総生産(名目GDP)は13兆5000億円を超え、政令指定都市の中では大阪市に次ぐ全国第2位の規模に達している。日本経済に大きな影響力を持つ地域であり、産業構造も多様だ。しかし横浜市経済局の調査では、市内の中小企業のうち約半数となる48.6%が「事業を引き継ぐ相手(または候補者)が決まっていない」と回答している。


 つまり、横浜市内の中小企業数7万6784社の約半数にあたる3万7000社以上が、将来的に姿を消してしまうかもしれないということになる。現場での労働力、管理職、幹部社員、後継者などを含め、人手不足は、ここまで深刻化しているのだ。


 こうした状況は、どの地域でも変わらない。そしてこれから、ますます加速していく。それを考えると、単純に定年後再雇用や定年延長、女性活躍への期待、外国人労働者の受け入れといった短絡的な策では対応しきれるかどうかわからない。

拡大するHRテック市場、年率40%の急成長

 そこで注目され始めているのが、デジタル技術を活用することで労働力不足の解決の糸口をつかむ「HRテック」である(HRはHuman Resource)。前述したRPAをもHRテックの一つと捉えることもできるが、ここで着目しようとしているのは、優秀な人材を「採用」し、「管理」し、そして「定着」させることを目指した技術やサービスである。


 人材の「採用」・「管理」・「定着」を支援するHRテックの市場は今、急速に拡大している。IT/ネット分野に特化した調査会社であるミック経済研究所によると、SaaSなどクラウドで利用できるHRテックのクラウドソリューションの市場規模は、2017年度に約179億5000億円に達し、2018年度には前年比39.7%増の250億8000万円に拡大。本格的な成長期に突入したという。


 同市場は、労働人口減少の中、労働基準法改正を受けて働き方改革や多様性を反映する必要性から、採用、人材確保、人材活用・育成ソリューションが一層重要度を増しており、大きく成長を続けているという。


 ミック経済研究所では、2019年度以降の予測も発表している。それによると、2019年度には前年比41.5%増の355億円に達する。2025年には大阪万博を控えて上昇軌道が想定され、2023年度には1000億円以上の市場規模になると予測している。


 また、同社ではHRテックのソリューションやサービスを、「採用管理」「人事・配置」「労務管理」「育成・定着」の4領域に分け、それぞれの市場規模の予測も発表している。それによると、採用管理に関するHRテックのソリューションは、2018年度の約94億円から、2019年度には前年比40.4%増の132億円にまで拡大すると予測。人事・配置に関するソリューションも、2018年度の87億円から、2019年度には同40.2%増の122億円に達するという。


HR Techクラウド市場 4分野別市場規模推移図
出典:「HRTechクラウド市場の実態と展望2018年度版」

 HRテックの市場は海外でも急拡大している。米国では主にスタートアップが市場を牽引。調査会社のCB Insightsによると、米国を中心とした海外では、2016年時点で既に約2000億円の資金がHRテックのスタートアップに流入したという。


 そして、現在、スタートアップを含め、さまざまな企業から提供されているHRテックのソリューションやサービスは、採用、管理、定着などはもちろん、それ以外の幅広い領域にわたっている。


 本稿後編では、HRテックの具体的なソリューション/サービスの動向についてまとめる。


ここから先は、DIGITALIST会員(登録無料)のみが閲覧することができます。