※ 上の写真は「2017年北京・雲棲大会(The Computing Conference 2017)」講演資料より引用

 AI(人工知能)は最先端技術の代表領域としてアリババが最も重視する領域だ。アリババクラウドでさまざまなAIサービスを提供する他、自社独自のAI部隊、外部とのジョイント、対外投資やM&AでAIエコシステムを形成しつつある。アリババAIの全体像と最新動向を解明する。(日経クロストレンドより転載)

アリババのAI戦略:クラウドベースの産業AI

 アリババは、「あらゆるビジネスの可能性を広げる力になる」というミッションを掲げ、ECを通じて巨大なグローバル企業に成長してきた。本業としてのECビジネスのサービス強化やそのエコシステムの形成には、数多くのAIシステムやツールを利用してきたが、これまで「AI戦略」といった言葉はあまり使っていなかった。


 自らの巨大なECを支えるために、常に最先端技術を取り入れてきたが、2018年「独身の日」に2135億元(約3兆4160億円)の取引高を記録したように、世界に類を見ない巨額取引の効率性や安全性などを確保するには、アリババならではの技術基盤を創出しなければならない状況にある。


 17年10月11日に、アリババのジャック・マー会長は、アリババのAI研究開発をメインに担当している達摩院(Alibaba DAMO Academy)を設立したとき、アリババの技術研究開発は、「利益も出せて、かつ楽しい問題解決のための研究(Research for solving problems with profit and fun)」という趣旨を掲げた。つまり、「問題解決」が技術研究開発の出発点ということであり、AI技術も例外ではない。


 17年12月19日に、アリババグループ副総裁でアリババクラウドCEOの胡暁明(サイモン・フー)氏は、アリババクラウドの年次イベント「2017年北京・雲棲大会(The Computing Conference 2017)」で、アリババのAI価値を発揮するための3条件を以下の通り提示した。


(1)「利活用シーン・ドリブン」
 AIを生かしてどのような問題を解決するか、社会的なコストをどれほど削減できるかなど、利活用シーンを考えること。


(2)「データ・ドリブン」
 AIの利活用には、AIを支える十分なデータを持っているかを考えること。


(3)「コンピューティング・ドリブン」
 AIの利活用には、十分なコンピューティング能力、深層学習能力、アルゴリズムなどを持っているかを考えること。


 これはジャック・マー会長が提唱した「問題解決のための研究」理念を貫いたもので、業務上の「利活用シーン」こそ、アリババのAIの出発点といえる。「AI技術があって、それをどこに使うか」ではなく、「業務上の問題を解決するのにAIをどう生かせるか」という視点だ。この視点を持つが故に、アリババのAIは、同社が提唱するコンセプト「産業AI(AI for Industries)」にフォーカスする。例えば、都市、工業、自動車、小売り、銀行、ホームなどにおいて効率向上、コスト削減、安全強化などの面でAIを生かすことだ。


【出所】「2017年北京・雲棲大会(The Computing Conference 2017)」講演資料

 アリババは、アリババクラウド(Aliyun)と名付けたクラウド・コンピューティング・サービスとして、自然言語処理、音声認識、画像認識、深層学習などのAI技術を「ET大脳(ETブレーン)」に統合し、さまざまな産業に簡単に利活用できるような業界ごとの産業AIを提供する。アリババクラウドは、アマゾンAWS、マイクロソフトAzureに次ぐ世界3番目のクラウド・コンピューティング・サービスであり、年々著しい成長を見せている。このアリババクラウドにおいて、ありとあらゆるアリババのAIサービスを提供する。この意味では、アリババのAI戦略は「クラウドベースの産業AI」と言ってもいい。


【出所】「2018年武漢・雲棲大会(The Computing Conference 2018)」講演資料

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