※ 上の写真はCESでのLG Electronicsの基調講演の様子。オープンプラットフォーム推進をうたう(出所:LG Electronics)

 筆者のCESへの参加は、今回のCES2019で10年連続となる。連続参加の始まりとなった2010年の「2010 International CES」の話題の中心は、間違いなくスマートフォンだった(International CESやConsumer Electronics Showは当時の名称。現在は「CES(シーイーエス)」へと名称変更している)。それから10年が経ち、スマートフォンは世界中に普及し、人々のライフスタイルやワークスタイルを大きく変えた。その結果、オンラインバンキングやソーシャルネットワーク、ECなど、スマートフォンの普及を前提としたグローバルビジネスが花開いている。


 スマートフォンの短期間での普及と関連市場の急拡大から学ぶことは多い。その代表例が「オープンプラットフォーム」の威力だろう。スマートフォンは外部の開発者を巻き込むことによって、カメラやスピーカーなどハードウエアが備えている機能を活かしたアプリケーションを量産した。米Appleが自社開発のアプリだけを搭載し、米GoogleがAndroid搭載のスマートフォンの製造を外部メーカーに認めていなければ、今日のスマートフォンの普及はなかっただろう。


 米Amazon.comが提供する音声プラットフォーム「Alexa」も同じシナリオを描き、実践している。外部のソフトウエア開発者は「Skill」と呼ぶ専用アプリを開発できるようにしているとともに、外部メーカーが自社ハードウエアにAlexaを搭載できる環境を用意しており、CESを主催するCTA(Consumer Technology Association)によるとSkillの数は約6万、互換端末は2万種類にも上る。


 今年のCES2019でも、多くの企業がプラットフォームの拡大に力を入れる姿を見ることができた。


 大手企業でオープンプラットフォーム戦略を強く印象づけたのが、韓国LG Electronics。CES2019の基調講演には同社会長兼CTO(最高技術責任者)のI.P. Park氏が登壇、同社がテレビをはじめとする家電、ロボット、自動車などに採用するOS「web OS」について、外部開発者からのアクセス範囲を同社のAI(人工知能)プラットフォーム「LG ThinQ」にも拡大することを発表した。


 web OSは、携帯情報端末「Palm」向けに開発されたPalm OSの流れをくむOSであり、米HPがPalmを買収、その後HPからLGがwebOS関連資産を買収した経緯を持つ。LGは2018年3月にwebOSをオープンソース化することを発表し、多くの企業が自社製品に組み込みやすくしていた。今回の発表はその延長にあるもので、LGとしては同社のAIプラットフォームも取り込んだサービスの開発を促す狙いがある。


 LGの基調講演では、過去の洗濯の頻度や内容、天気予報から洗濯のタイミングをアドバイスしてくれるサービス、冷蔵庫の中にある食材とスケジュールから次の食事メニューを提案してくれるサービスを示していたが、これらはあくまでLGが考えたもの。プラットフォームのオープン化によって、サービスの発案を外部開発者に委ねたわけだ。


 基調講演には、モビリティサービスや車載、企業、金融向けソフトウエアを開発するスイスLuxoftの上級副社長Alwin Bakkenes氏がゲストとして登壇。同氏はモビリティ体験を縦割りでなく一続きのものにするためのプラットフォームとして、リビングルームでの実績があるweb OSに期待を寄せた。「移動空間はリビングルームのような『賢い場所』になり、カスタマイズされたものになる。その実現のため、webOSは最適なプラットフォームだ」(Bakkenes氏)。


 LG以外では、BoschがCES2019会場に展示したセキュリティカメラのプラットフォーム化を推進している。同社は、外部企業がサービス内に組み込むためのSDK(ソフトウエア開発キット)を公開済みだ。「我々は、スマートフォンでいうAndroidのような存在を目指す」(同社の説明員)。防犯目的のカメラ設置が増えている一方、大量の映像から不審者を特定するといった画像認識機能も進化しており、セキュリティカメラはプラットフォーム化に向く分野と言える。


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