世界を席巻するMaaS(Mobility as a Service)。フィンランドのMaaS Globalが提供するモビリティサービスアプリ「Whim」に端を発し、ドイツやイギリス、アメリカなど欧米でも続々と構築が始まっている。日本でも2017年から民間主導で次々に実証実験が立ち上がり、政府もMaaSの社会実装に向けて産官学を交えて基盤構築に乗り出した。


 これから日本のMaaSはどのように立ち上がり、進化していくのか。それによって交通インフラ、さらに私たちの生活はどう変わるのか。日本版MaaSの姿を探る本特集、第1弾の本稿では国の動きに目を向けてみる。


 国土交通省は「都市と地方の新たなモビリティーサービス懇談会」を立ち上げ。JR東日本、東急電鉄、小田急電鉄、みちのりホールディングス、ジャパンタクシー、ジョルダンなど複数の民間事業者へのヒアリングを踏まえた上で、有識者と都市局や道路局、鉄道局、自動車局など官学の関係者が集まり、日本版MaaSの概念構築からデータ・システム連携、運賃・料金施策、まちづくり・インフラ整備まで、環境整備に向けた議論を進めている。


 国土交通省総合政策局の小川洋輔課長補佐は「MaaS GlobalのWhimをそのまま日本に持ってくればいいというものではない。懇談会では、日本で機能するMaaSとはどうあるべきか、2018年から国土交通省をはじめとした複数の省庁でゼロから検討している」と語る。


 MaaSは、自動運転やAI、オープンデータなどを掛け合わせ、従来型の交通・移動手段にシェアリングの考え方や、他のサービスとの連携機能を持ち込んだものといわれている。交通が単なる移動手段から、包括的なサービスとして変化したものだ。


「鉄道やバスなどの公共交通だけでなく、タクシーやシェアリングサービスなど、自家用車以外の複数の交通を一元化し、アプリ一つで検索・予約・決済まで行える上、小売りや宿泊といった移動以外のサービスまでもつながったものを考えている。日本版では、地域横断的な取り組みだけでなく、都市、地方、観光地という地域別の課題と解決手法を組み込んでいく必要がある」(小川課長補佐)

都市、地方、観光という地域特性を踏まえたMaaSを検討

 日本の都市部と地方部では、人口や高齢化の状況、暮らしぶり、そして交通事情が大きく異なる。当然、課題もそれぞれだ。都市部では、過密や混雑が慢性化しており、朝や帰宅時のラッシュも激しい。タクシーなどのドライバー不足も課題だ。MaaSには、これら交通モードの選択肢を多様に提示し、人の流れを分散させる狙いがある。


 一方、地方部では交通サービスの縮小化が深刻だ。バスやタクシードライバーの高齢化、減少、そして需要の低下により、乗り合いバスの廃止が進んでいる。地域の鉄道輸送人員も減少を続け、路線自体も廃止に追い込まれているのだ。こうした交通サービスの縮小も受け、地域の大半が自家用車を使っているが、ドライバーも高齢化で免許返納せざるをえず、移動手段を確保できなくなる人が増加している。その解決策となり得るのが、シェアタクシーや自動運転などである。


 さらに、地方では外国人観光客の増加が新たな需要につながると期待されている。ここ数年で訪日外国人は爆発的に増加しており、2018年には3000万人を突破した。初訪では東京や京都など有名観光地へ行く人が大半だが、2回目以降は地方の様々なエリアへ行く傾向があり、交通の活性化も見込まれている。このため、より快適に旅をしてもらうために、観光におけるMaaSも需要が見込まれている。


「例えばMaaSのアプリで秋葉原の『ふくろうカフェ』を検索すると、ホテルからカフェまでラストワンマイルも含めて、公共交通とシェアサイクルを利用する行き方など、最短かつ最適の行き方で予約・決済が可能になる。さらにふくろうカフェのクーポン券や秋葉原の店舗の割引券なども提供。これらを各種の用途で利用できるようになれば、さらなる観光活性化にもつながる」


 既存のサービスでも、車とバスを組み合わせた検索やラストワンマイルの検索、小売店のサービスを利用できるアプリなどが存在しているが、どれもバラバラの状態。これらを統合して予約決済できるシステムを目指す。「将来的には、観光客に対してだけでなく、高齢者が利用する病院案内など、国民のサービスに活用できると考えている」


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データ連携を促し、海外に負けないMaaSを目指す

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