※上の写真は、完成した「はつだいの靴下」を手にする原田文雄氏(左)と白倉重樹氏(右)

 イノベーションには新たな出会いと気づきが必要だとはよく言われるが、異なる組織が共同開発をいざ始めてみると、困難を伴うことが多い。相互に補完関係があったとしても、様々な摩擦が生じ、必ずしもすんなり完成までたどり着けるわけではない。


 そんななか、業種も企業規模も異なり本社所在地も遠い2社、介護保育事業を手がけるベネッセスタイルケアと、新潟の靴下メーカー山忠は、履きやすく、つまずきにくいという高齢者に配慮した靴下「はつだいの靴下」の共同開発に成功した。本製品は、エンドユーザーと共に開発するリビングラボ手法を用いて、ベネッセスタイルケアが運営する高齢者向けホーム「グランダ初台」の入居者と共に開発したもの。「みえる・わかる・できる」の領域の人たちが連携することで、課題を解決する「かわる」を目指す交流会「カンブリアナイト(ヒューマンセンシングビジネス研究会)」から生まれたコラボ事例である。


 「商品開発としての価値はもちろんだが、大きな意義をある取り組みになった」――。ベネッセスタイルケアの原田文雄氏と、山忠の白倉重樹氏がそう語る理由とは何なのか?今回の連携のキーパーソン2人に話を聞いた。


ベネッセスタイルケアの原田文雄氏(左)と山忠の白倉重樹氏(右)

両社でプロジェクトを始めるに至った経緯を教えてください。


原田:ベネッセスタイルケアでは、300拠点以上の有料老人ホームを運営していて、入居者が1万6000人ほどいます。私は、シニア介護研究所の事業開発推進室に所属しています。研究所では、20年以上の介護事業ノウハウや研究成果を発表し、業界を底上げするほか、それらの研究結果を一般市場にも展開したいという想いがありました。


ベネッセスタイルケアの原田文雄氏

白倉:我々は今年で60年目になる新潟の靴下メーカーです。一般に流通している靴下とは違う少し特殊な、健康になる靴下を通信販売で直接お客様に届けてきました。


 特定のお客様と直接やり取りをして、ニーズを深掘りするものづくりをしてきたので、お客様のことは深く理解していますが、一方、新しいものを作っても届け先が固定化されていました。また、60代後半から70代の顧客の方が多いので、彼らが介護施設に入ってしまうと商品を届けられない問題もあったので、他の高齢者の方にも届けられるようなパートナーを探していました。


 我々は、ものづくりは得意です。でも、どういう方にどのように使っていただくのがいいのかという部分が欠けていました。今回の商品の原点となる転倒予防靴下も、数年前から研究していて機能としてのエビデンスは出ているが、これからどうしようとなっていた。そんな時に原田さんと出会いました。


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脱メーカー思考。完成品は全然完成品ではなかった。

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