AI(人工知能)やブロックチェーンなどの技術が登場し、あらゆる分野でデジタル化が進んでいる。その動きは保険業界にも急速に波及しており、規模の大小にかかわらず、多くの保険会社がITと保険を組み合わせた商品や事業の開発に取り組んでいる。その強力な推進者の1社が、損害保険ジャパン日本興亜を傘下に持つSOMPOホールディングスだ。


 SOMPOホールディングスは、「デジタル戦略」を中期経営計画の主軸とし、2016年にデジタル戦略部を新設。さらに、デジタル分野における研究・開発の拠点となる「SOMPO Digital Lab」を東京、米国シリコンバレー、イスラエルに設置するなど、デジタル技術により従来事業の破壊が進行する「Digital Disruption」の時代において、自ら積極的に変革を仕掛けている。


 この大胆な取り組みのかじ取りをしているのが、グループCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)を務める常務執行役員の楢﨑浩一氏である。保険業界は未経験ながら、シリコンバレーで長年培ったデジタル分野の経験を買われ、2016年にCDOとして招聘された。

“会社の死”を意識していた経営トップの覚悟が決め手に

 「魂のぶつかり合いがあった――」。CDO職を引き受けた理由について、楢﨑氏は開口一番にそう答えた。三菱商事に入社、シリコンバレー駐在後に転職、米国の新興企業でCEOを務めるなど、約20年間にわたって海外で活躍してきた楢﨑氏。それまでの経験から、SOMPOホールディングスがCDOとして誘いをかけてきたことに対して、当初は戸惑いもあったようだ。


 「2016年当時、実際に本気でデジタル化に取り組む企業はまだそれほど多くはありませんでした。SOMPOホールディングスから打診されたCDO職についても、『わが社はデジタル化を推進しています』という体裁を取り繕うだけではないかと、懐疑的だったわけです」(楢﨑氏)


 社外出身者が「必ずしも正当に扱われるとは限らない」ことも、三菱商事時代の経験から知っていた。このような背景もあって、「広告塔のような立場に立たされる仕事なら、引き受けるつもりはありませんでした」と当時を振り返る。