「AIを含め先進技術を活用して、超高齢化社会に代表されるさまざまな社会課題を解決する」。そんなビジョンを描くベンチャー企業がある。エクサウィザーズだ。その取り組みの領域は医療、創薬、介護、人材マネージメントと幅広い。このうち、医療、創薬領域でのAI活用を担当しているのが、MedTech事業部を率いる取締役フェローの古屋俊和氏である。

 医療・創薬領域で同社が取り組んでいるプロジェクトには、心臓狭窄の診断支援、患者に適した抗がん剤選択の支援、そして創薬支援といったものがある。心臓狭窄に関してが画像診断だが、抗がん剤選択や創薬の支援は、画像とは異なるデータの解析でのAI活用例である。

血管の形状と詰まりを検出

 心臓狭窄の診断支援は、vol.3で紹介したエルピクセルのMRI(磁気共鳴断層撮影装置)、CT(コンピュータ断層撮影装置)の画像診断と似た取り組みで、CTで撮影した心臓の画像から冠動脈領域での血管の“詰まり”を検出する作業をサポートするもの。従来、心臓の血管だけをコンピュータ画像から取り出して確認する作業は、患者1人当たり20~30分かかっていた。血管の形が十人十色で違っているために、血管部分をコンピュータで厳密に自動的に判別することが難しかったためだ。

 ただ、他の医療画像診断と同様に、この作業には医師の経験とスキルが欠かせないうえ、時間も費やさなければならない。そこで同社が取り組んだのが、ディープラーニングによって血管の形状を学習する仕組みの開発である。このAIを使って血管の形状と、詰まりなどの異常を自動判別できれば、画像診断の作業を簡略化し、医師の負担を低減できる。ディープラーニングで学習する血管の種類を変えれば、冠動脈以外の血管にも適用できる。

心臓の画像から冠動脈領域を高精度に抽出する(出所:エクサウィザーズ)

 このプロジェクトの技術面で興味深いのは、AIの学習に「転移学習」を使ったこと。これは機械学習の一つで、少ない学習で効果を得るための手法である。

 「本来目的としている医療画像とは異なる分野の画像で、いろいろなものの特徴を学習させておきます。例えば元の画像はクルマの自動認識に使ったものでもよく、こうして学習したAIを転用することで、医療画像そのものの学習件数は比較的少なくて済みます。実際、心臓狭窄診断支援のAIでは、学習させた画像は100枚程度で済みました」と古屋氏は話す。