10月9日、日本外国特派員協会には史上最大となる150人以上のメディアが詰めかけた。2023年、アーティストと共に月周回飛行に行くことを宣言したZOZO代表取締役社長の前澤友作氏の日本初となる記者会見だ。会場は詰めかけたメディアで大混乱し、前澤氏が登場するや否やフラッシュの嵐。前澤氏と彼の打ち立てた月旅行への注目の高さを実感する。


 当の前澤氏本人は集まった報道陣の多さに驚きつつ、「なんでも聞いてください」と気負いがない。月旅行に関係ない交際中の女優や球団経営に関する質問にも嫌な顔一つせず、丁寧に答えていく。もっとも心に響いたのは、「なぜ月に行くという大きな決断をしたのか」という問いに対する答えだった。


 「僕はそこ(月)に行くことより『自分のメッセージを世界中に発信する大きなチャンスだ』と捉えました。自分のメッセージは『世界は平和なほうがいいじゃん』と伝えたいだけです」。宇宙に行く理由に、こんなにストレートに世界平和を語った人がかつていただろうか。しかも国家プロジェクトの宇宙飛行士でなく、民間人で!

地球を代表するアーティスト最大8人を招待

 前澤氏が世界平和について想いを強くしたのは、2001年9月11日に米国で起きた同時多発テロ事件だった。「2度とこんなことが起きない世界を作るために自分ができることがあるなら、全力を捧げたい」と決めた。そしてすぐ会社経営の目的を「世界平和の実現」にする。その背景には「みんな仲良くやろうよ。平和がいいじゃない」という強い思いがあるという。

ZOZO代表取締役の前澤友作氏は1975年生まれ。2012年に現代芸術振興財団を設立し、2018年にはフランス芸術文化勲章オフィシエを受賞。アートコレクターとしても知られる(撮影:林公代)

 過去に、宇宙旅行を実現した民間人は世界で7人。20億円以上と言われる費用を払い、国際宇宙ステーション(ISS)に1週間程度滞在している。IT関係者が多く、「長年宇宙に行きたかった」ちょっぴりGEEKなお金持ちという印象だ。


 一方、前澤氏は巨大な宇宙船を貸し切り、「世界を平和に」を実現するため地球を代表するアーティストを最大8人招待し、自身はホストキュレーターとして搭乗する。芸術に造詣の深い前澤氏は「アートは言葉を超えて人をつなぎ、世界を平和にする力がある」と考える。アーティストには月旅行後、作品を制作してもらい公開する。


 作曲家ベートーベンの「月光」や画家ゴッホの「星月夜」のように、その作品は国籍や宗教の違いを超えて人々に感動を与え続けるかもしれない。税金を使った政府ミッションでは実現しえない、かつ目先の利益を追求するものでもない。なんてクリエイティブで大胆なプロジェクトだろう。


 実現すれば1972年に月を去った米アポロ17号以来、半世紀ぶりの月世界訪問となる。目的、手段、推定1000億円ともいわれる予算、話題性、どれをとってもスケールが桁外れ。そしてファッション業界×宇宙という意外な組み合わせも面白い。「新しい宇宙時代が始まる!」ことを、前澤友作「#dearMoon」記者会見で感じ、わくわくしていた。

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