自動運転を組み込んだスマートシティを構築する試みが、世界的に活発化している。モビリティ・スマートシティ構築の動きは必ずしも今に始まったことではないが、最近増えているのは、デジタル技術を活用した、いわゆるMaaS(Mobility as a Service)を核としたまちづくり。2019年は、その中のラストワンマイル部分に自動運転を取り込んだ例が、世界的に広がりを見せる。


 モビリティ・スマートシティづくりの背景にあるのは、交通渋滞や交通事故、モビリティに起因する二酸化炭素排出の深刻化といった社会課題だ。これに対し、多くの都市が志向するモビリティの考え方の基本は、徒歩、自転車、バス、鉄道などの公共交通機関を優先する道路や都市構造とすること。そのうえで、自宅から公共交通機関の駅までなどのライトワンマイルの交通手段に自動運転車を運行しようと計画している。複数の交通機関を効率的に組み合わせて利用できるようにする「マルチモーダル化」の一部という位置付けである。

<欧米>
ラストワンマイルへの自動運転車の導入

 米国を代表するモビリティ中心のスマートシティ・プロジェクトであるコロンバス市の「Smart Columbus」では、ラストワンマイルの手段としてEV(電気自動車)の自動運転車を運行して、オハイオ州の交通当局であるCOTA(Central Ohio Transit Authority)が運営するBRT(Bus Rapid Transit)と連携させる構想を持っている。


米国コロンバス市で運行されているBRT(出所:COTA)

 Smart Columbusは、DOT(米国運輸省)が主導してアイデアを競うコンテスト「Smart City Challenge」に優勝し、5000万ドルの資金援助を受けて、最新のモビリティシステムの導入を開始した。2018年5月17日には、同システムの中核であるオペレーティングシステムの第1バージョンを完成させた。


 同オペレーティングシステムが管理・制御するテーマは8つあるが、特に新技術の導入に力を入れており、EVを使った自動運転車の導入を進める。同市のEaston地区の一般道路でEVの自動運転車を無人でフリート走行させ、BRTに連結させる計画である。


 ポートランド市も同市が進めるスマートシティ計画「Ubiquitous Mobility for Portland」の中で、ラストワンマイルの自動運転プロジェクトを本格化させる計画を策定し、実現に向けて動き出した。そのために、自動運転車を交通システムに組み込む戦略「SAVI(Smart Autonomous Vehicles Initiative)」を策定し、2018年6月に市議会によって採択された。


 ポートランド市の交通当局の担当者によると、自動運転車は二酸化炭素削減効果のほか、渋滞の緩和や同市が目標とする2025年までに交通死亡事故をゼロにする「Vison Zero」にも貢献できることが評価された。これにより自動運転車の走行について規制緩和が図られ、実証が本格化する。同市は、自動運転車の導入にあたり、米Waymo、米Uber Technologies、米Lyftと提携するという。


 欧州でも例えば、ドイツ・ベルリン市は、スマートシティ・プロジェクトの中で、公共交通機関とEV、自動運転車などの複数の交通機関を最適に活用するマルチモーダルシステムの検討を進めている。ベルリン市中心部にある実証サイト「EUREF-Campus」内でドイツ鉄道グループのIokiが仏Easymileの自動運転EV「EZ10」を採用して、サイト内を固定ルートで走行する実証を2017年12月にスタートさせた。今後はオンデマンドで配車するサービスも展開予定で、電車やバスと組み合わせて自動運転車を使った「ドア・ツー・ドア・モビリティ」を提供する計画としている。


ドイツ・ベルリンのスマートシティプロジェクトサイト「EUREF-Campus」内で始まったミニバスの自動運転走行の様子(出所:Ioki)

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