「『世界は平和なほうがいいじゃん』と伝えたいだけです」。ZOZOの前澤友作社長がこんな言葉で、2023年に予定される月周回旅行への動機を語った記者会見が話題をさらった2018年。2019年は、民間企業が宇宙ビジネスの主役となる「ニュースペース」と呼ばれる新潮流が、国内でさらに鮮明になり、ベンチャー企業が活躍しそうだ。

2020年には人工流れ星が見られる?

 2019年1月17日に、鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられる宇宙航空研究開発機構(JAXA)のイプシロンロケット4号機には7つの衛星が搭載され、宇宙に旅立つ。そのうちの2つは、日本の宇宙ベンチャー企業が開発した衛星だ。

 ひとつはALE(エール)が開発した人工流れ星実証衛星「ALE-1」、もうひとつはアクセルスペースが製造したJAXAの小型実証衛星1号機「RAPIS-1」である。ともに、高度500kmの太陽同期軌道に放出される。

1月に宇宙に旅立つALEの人工衛星(出所:ALE)

 「ALE-1」は、ALEが創業以来、7年にわたって開発してきた初号機の衛星。ユニークなのは、宇宙空間で放出した物体の粒が大気圏で燃え尽きることで、地上から流れ星として見られる科学とエンターテイメント分野の衛星であることだ。

 高度400㎞まで降下した衛星から高速で放出されて粒は、地球を約1/6周しながら狙った地域上空の大気圏に突入する。大きさ1㎝程度の粒が燃え尽きる過程で、流れ星のように発光する。今回は2020年春に、広島・瀬戸内地域で実施する予定で、直径約200kmの範囲で600万人以上が人工流れ星を観測できるという。ALEは2019年半ばにも、もうひとつの衛星の打ち上げを予定している。

JAXAの衛星をベンチャー企業が初めて製造

 アクセルスペースの「RAPIS-1」は200㎏の小型衛星で、JAXAが公募で選定し、企業や大学が開発した集積回路の「ナノブリッジFPGA」、「Xバンド高速通信機」、「超小型・省電力GNSS受信機」、「軽量太陽電池パドル」といった7つの部品・機器の実証を軌道上で行う。JAXAの衛星としては、ベンチャー企業が初めて製造する。

 アクセルスペースはこれまでに、地球観測衛星の開発・運用で実績がある。2018年12月には、超小型地球観測衛星「GRUS」をロシアのロケット・ソユーズで打ち上げた。GRUSは100㎏以下の超小型にもかかわらず、地上の車も判別できる分解能2.5mの観測が可能である。同社は高度約 600kmに数十機のGRUSを配置した地球観測網「AxelGlobe」を構築し、地球全体のリモートセンシング画像を高頻度で更新できるようにする。

アクセルスペースのGRUSのイメージ図。2022 年ころまでに数十機を軌道上で運用する予定(出所:アクセルスペース)

 2019年から観測画像などの販売を始め、2022年ころまでに1日に1回、全世界を撮影できるまでに頻度を高める予定だ。そこから得たデータを解析し、農業や森林管理、経済動向分析、災害対策といった分野向けにサービスを提供するという。

社会人組織や大学初の衛星も打ち上げ

 ベンチャー企業ではないが、一般社団法人リーマンサットスペーシズの超小型衛星「RSP-00」は一足早く、2018年9月にJAXAの国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟から宇宙に旅立った。「RSP-00」は、宇宙ビジネスとは直接のかかわりのない会社員や学生などのメンバーが構成する「リーマンサット・プロジェクト」によって開発・製造された。クラウドファンディングで開発資金を調達した。

 RSP-00は、衛星に搭載したカメラで地球を撮影した画像データや、RSP-00自身の状態のデータを送信するなどし、地球を周回中である。2019年には、地上局からの命令で、地球と宇宙を背景に衛星が自撮り写真を撮影する機能を備えた「RSP-01」を打ち上げる予定だ。開発メンバーも募集している。

 結婚など祝い事の記念プレートを宇宙に配送します――。筑波大学初のワープスペースは2019年度末に、独自開発の超小型衛星を使って新郎新婦の名前やメッセージなどを刻んだ記念プレートを宇宙空間に放出するビジネスに取り組んでいる。プレートは9mm×18mmの純チタン製で、宇宙配送価格は3万円だ。

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