企業がスポーツから学べることは多い。特にチームスポーツで強いチームの監督のマネジメントが注目を集めることがよくある。だが、勝利が目的だとすれば、全てのスポーツが同じ手法でマネジメントできるわけではない。例えばサッカーとバスケットボール、ともに団体球技だが勝つためには全く違うアプローチをとるという。


 「ティッピング・ポイント」など多数のビジネス書の著者であるMalcom Gladwell(マルコム・グラッドウェル)氏が、勝つ組織作りとして2つのチームスポーツを比較した。

スーパースターかボトムアップか

 サッカーとバスケットの違いはたくさんある。サッカーは11人でバスケットは5人、サッカーは屋外でバスケットは室内、コートの広さも違うし、サッカーは足でボールを蹴りバスケットは手でボールを持つなどルールも全く違う。だが、組織論として見た時の違いはなんだろうか?


 チームの中の1人をより良い選手と交換できるとする。チームを強くするために、強い選手をより強くするか、弱い選手をより良い選手にするか――サッカーとバスケットでは、ここが違うというのがGladwell氏の意見だ。Gladwell氏は前者を“ストロング・リンク(Strong Link)”、後者を“ウィーク・リンク(Weak Link)”と表現する。結論を先に言うなら、サッカーはウィーク・リンクで、バスケットボールはストロング・リンクとなる。


 サッカーから見てみよう。Gladwell氏は、プレミアリーグが出している公式スコアを利用して仮想チームを作り、シミュレーションした結果を紹介する。(1)チームのベストプレーヤーを、その人のスコアより7ポイント高いプレーヤーに交換した場合、(2)ワーストプレーヤーを、その人のスコアより7ポイント高いプレーヤーに交換した場合では、どちらが強くなるのか。Gladwell氏によると、答えは(2)だ。シミュレーションでは、ワーストプレーヤーを良くすることでゴールの数が2倍になるなど、(1)よりも強くなることがわかったという。


 同じようなことは経済学者のChris Anderson(クリス・アンダーソン)氏と行動経済学の専門家のDavid Sally(デヴィッド・サリー)氏も指摘している。弱い選手にボールを回さない、つまり、いないことにすればどうなるか――両氏はレッドカードが出た選手は平均よりもシュート数が少ない(=ベストプレーヤーではないと仮定できる)などのデータを得て、レッドカードが出た後に、そのチームが勝ったか負けたかを調べた。すると、レッドカードが1枚出ると、チームの期待点が下がる(ドイツ・ブンデスリーガではレッドカード1枚につき期待点は半分に下がる)ことがわかった。うまくない選手がいる11人の方が、うまくない選手抜きの10人よりも強い、といえるだろう。

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