前編からのつづき)


 2019年1月31日に開催したDIGITALIST主催イベント第3弾。私たちが日常の多くの時間を過ごしているオフィスビルは今後、どのように進化していくのだろうか。前半の講演では、建築・デザイン事務所noiz(ノイズ)を主宰するメンバーの一人、豊田啓介氏が、未来のワーキングスペースについて様々な可能性を提示した。イベントの後半では、豊田氏とDIGITALIST編集長の河井保博が、「未来のオフィスビル」についてさらに深くディスカッションした(以下、敬称略)。

複数の異なる専門性を持つことが新しい発想につながる

河井:前半の豊田さんのお話、聞いていたらドキドキワクワクしてきました。情報と物質の境界についての話題が、特に興味深かった。このディスカッションでも広げていきたいと思っています。


 豊田さんは、「未来の街・オフィスビル」と聞いてどのようなものをイメージされますか? こういう形になっているといいなとか、理想のようなものがあれば教えてください。


豊田:自分は「スマートシティコンサルタント」のような立場で仕事をすることも多いので、未来の街やオフィスビルについてのアイデアを語りだしたら、三日三晩しゃべり続けることも可能なくらい考えていることがあります(笑)。なかなか絞りづらいのですが、何にしてもテクノロジーを何のために使うのかという大目標というかストーリーというか、そこがある程度共有できていないと実効性は持ちづらいとは感じています。例えば直球ですが、生活環境がよりグリーンになるとか、より仕事の選択肢が増えるとか、より空気が綺麗になるとかがないと、意味がないですよね。もちろん、その価値概念自体が変わっていくこと自体も大事な効果でもあるので、そう簡単にわかりやすければいいというものでもないんですが。


河井:最終的には、「暮らしやすさ・過ごしやすさ」のような部分に集約されていくわけですね。ところで、アイデア自体は三日三晩しゃべり続けることも可能なくらいあるとのことですが、そういったアイデアはどこから生まれてくるんでしょう。意識して考えているのか、それとも日常生活の中で自然に浮かんでくるものなのか。


豊田:合宿のような形をとって集中して考えることもありますが、日常生活のちょっとした時間の中で思考実験的に考えることのほうが多いかもしれません。例えば最近だと、タクシーのヘッドレストについているタブレット端末は、乗客の顔を認識して、その人に最適な広告を流すようになっています。僕が乗ると、人材募集系の広告が流れてくることが多いんですけど……女子高生のお面をかぶってタクシーに乗ったら、どんな広告が流れてくるのかな、とか考えますよね(笑)。


 テレビの広告などはみんなに同じものが流れているわけですけど、このタクシーの広告のように、同じ世界にいるのに僕と他の人とでは違うものが届くことって、結構、ディストピア(編集部注:例えば極端なまでの管理社会)じゃないかなと思ったりもします。むしろ自分と関係のないものに触れる機会があったからこそ、生活は面白かったはずだと。そういう効率化の先にあるディストピア的な世界にならないようにするためには、どんな方法があるのかとか、タクシーに乗っていて考えたりしますね。


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